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それから-02 [シトワイヤン-35]

軍備は世界的に縮小され、今は技術力の保持と…、例えば、巨大隕石が地球に近づいて来た時、それに対応出来るミサイルの研究や、災害時などに危険を伴う任務に就いて貰う人の養成といった形になった。
かつての戦闘機はその性能や操縦技術を競う競技の為に残されてはいるが、もう戦争の道具ではない、仮想敵国すら存在しないのだから。
今は軍備に代わって国際宇宙ステーションが大きくなり数も増え、そこへ行き来する宇宙船の数を増やしている。
もし地球環境がこの先悪化しても、人類を絶滅させない為、いや、人類だけでなく地球上の生物を絶滅させない為に箱舟計画も進められている。
砂漠には巨大なドームが建設され、そこでは人が住むのに適した環境を、水などの全てを外部から補給なしで、循環させながら維持する実験が始まっているが、それは近い将来、宇宙空間に居住コロニーを建設する事を目指している。

「ねえ、長距離の宇宙旅行が実現したら、それは旅行好きの人にとってどう感じられると思う?」
「愛華さん、それって…、あっ、そうか、確かに長距離の旅行だけど、その間ずっと宇宙船から出られないとしたら、旅行好きより引き籠り系の方が向いているのかもね。」
「智里には無理だな。」
「よね、私は飛行船の旅が一番だわ、私達の家はファルコン号、旅と言っても地球は私達の庭ですから。」
「庭が広すぎて、眺めて回るのに一苦労だがな。」
「こうして、みんなで夜空を眺めるのって、万里が中学生の時以来よね。」
「うん、あの時はペルセウス座流星群の条件が良くて、鹿丘の森の展望エリアが人で一杯だったな。
今夜の獅子座流星群も、あの時ぐらいになるのかしら。」
「姫さま、予測では、かなり期待出来そうなのです。
今日は天気が良くて、しかも、ここは明かりが殆ど無いですからね、船体を獅子座の見易い向きに固定してくれていますので、これから流れ星の数が増えて行くと思います。」
「ふと、思ったのですが、人工衛星からは流れ星、見えないのですよね。」
「ですね、大気圏に突入しての輝きですから。」
「宇宙旅行ってSFに出て来るワープとか実現しないと、本当に退屈しそうだな。」
「万里もそう思うでしょ、豪華客船の旅みたいに娯楽施設を充実させ、地上で暮らしているぐらいのレベルにしないと…、あっ、今の大きかったね。」
「流れ星の数が増えて来た、これは沢山お願いが出来そうだな。」
「今更、何をお願いするのです?」
「はは、みんなの健康ぐらいか。」
「お星さまにお願いして、災害が無くなれば良いのだけれど。」
「姫さまのお願いなら聞き届けて貰えるのでは有りませんか。」
「清香さん、そんなこと言ってると、裕くんに笑われますよ。」
「大丈夫です、三歳らしからぬ言動はしていますが私達の子なのですよ。
姫さまが、世界中の子ども達は世界中の大人が守るべき、地球市民の子だと、生まれたばかりの裕を抱いてお話し下さって…。」

流れ星を見ながらの話は、何時もとは違った雰囲気に、その流れから姫さまが歌って下さる…。

「あかいめだまの さそり♪  ひろげた鷲の つばさ♪  あをいめだまの 小いぬ♪ …♪」

宮沢賢治、星めぐりの歌がファルコン号に広がった。
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