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それから-04 [シトワイヤン-35]

「和馬さん、今日は裕くんと飽和水蒸気量の話とかしましたが、英才教育をしているのですか?」
「いえ、そういうつもりは無かったのですが、難しい話をしても理解している様なので、つい踏み込んで教えてしまうのです。
船のクルーやサポートスタッフ達も裕の知的好奇心を満たしてくれていますし、日本語と英語をきちんと使い分けていますでしょう。
英語で教えられた事は英語で考え、日本語で教えられた事は日本語で考えてるみたいなのです。
最近になって、お腹の中にいた頃の話をしてくれたのですが、ずっと姫さまを感じていたそうで、言語ではなく抽象的なイメージとして色々受け止めていて、驚くべき事に清香のお腹の中にいる頃から彼の学習が始まっていたみたいです。」
「えっ、それって普通の事ではないのですか?」
「えっ、姫さまもそうだったのですか?」
「ええ、姉は私が母のお腹の中にいた頃から、沢山話しかけてくれたのですよ。
母は、そんな姉を優しく見守っていました。
だから安心して生まれて来られたのです。」
「胎内記憶は本当の記憶かどうか微妙だと考える学者もいるのですが、裕がもう少し大きくなると忘れて行くものだと理解していました。」
「私は結構覚えていて、姉や母がその頃の話をしてくれると視覚情報の無い中で感じた事を思い出します。」
「裕の事を天才児だという人がいますが、姫さまから見て如何です?」
「中学生でも理解に苦しむ事を把握していますから、そうかも知れません、先天的遺伝的な要素は間違いないですものね。」
「清香は、私達がずっと姫さまと共に過ごして来たからだと話しています。」
「どうでしょうか、それより今後の教育方針とかは?」
「しばらくは成り行きに任せようかと、子ども達に接する大人は皆、子どもにとって何が必要なのか考えてくれています。
そこに問題を感じていません、ただ、いずれ良き友人を得られる環境を考えたいとは思っています。
能力がずば抜けて高い子に対する教育、日本は遅れていましたが特別プログラムを組める環境が整って来ています。
本当に力が有ったら、制度上は日本でも九歳で大学卒業が可能になると聞いています。
まあ、急ぐ必要は無いのですが、幼くても興味を持った分野を追求するというのは有りだと考えています。」
「そうですね、素直で素敵な子のまま大きくなって欲しいです。
私をお嫁さんにしてくれるそうですし。」
「えっ、そんな事、言ってましたか。」
「ふふ、今までで裕くんだけです、正式にプロポーズしてくれたら真面目に考えますよ。」
「はぁ…、まだ三歳なのですが…。」
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