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新学期-405 [花鈴-41]

「先々耕す予定の無い休耕田を手放せなかった人が、姫さまから、荒れた田んぼを残して置くことを御先祖様喜ぶとでも、と言われたそうで。」
「権左衛門さんね。
 荒れ果てていても先祖が遺してくれた土地だからと話していたのよ。
 土地を相続してくれる人が居なかったから、貸して貰うより買い取った方が良いと判断したの。」
「デイサービスへ通えなくなった後のフォローも株式会社花鈴にお願いした、と話してみえました。」
「結果的に我が社の社員を信じて下さり色々託して下さったわ。
 耕作放棄地だけでなく家も。」
「相続する人がいないのですよね?」
「ええ、彼が信頼している南野さんが間に入って契約書を交わして有るのよ。
 生きてる間は株式会社花鈴が責任持ってお世話させて頂く代わりに天寿を全うされた後は全財産を我が社にと。
 南野さんにその契約が守られることを見守って頂く形でね。」
「法定相続人が居ないとそんな形もあるのですか…。」
「私達が動いているからここの土地は売れるのだけど、普通の過疎地なんて土地は売れず所有者が亡くなると行政サイドも扱いに困ったりしていてね。
 過疎化を止めたいと考えていても、そこに所有者のいなくなった耕作放棄地が点在していてはマイナスにしかならないでしょ。
 法整備を少しづつ進めているみたいだけど、時間が掛かるのよ。」
「法改正には何年も掛かることが有るとか…。」
「権左衛門さんが聞き分けの良いご老人で良かったわ。
 休耕田は区画整理して宅地への変更を進めていてね、そこに入所タイプの老人福祉施設を建てる計画が有るの、権左衛門さんが自宅での一人暮らしが出来なくなったら入所して頂く為にね。」
「施設建設となると費用が掛かりそうですが…。
 需要が有るから問題ないわ。
 寝たきりになって家族に迷惑掛けたくない人とかね。
 その辺りのことは調査済みなのだけど、ここの人だけで定員を埋める必要はなくて…。
 寝たきりになったら都会だろうが田舎だろうが関係ないのよ。」
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