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新学期-379 [花鈴-38]

「畑仕事は大変そうだな。」
「確かに大変なことも有るのだけど、農機具を充実させてるだけでなく、楽に作業出来る様に工夫もしているのよ。
 私達が取り組んでる菜園は規模が小さいのに大勢で管理しているから問題ない、でも本格的な畑では、同じ姿勢での作業が続くと腰を痛めやすかったりしてね。
 我が社の畑は土地の関係で大規模に出来ないことも有り、効率が良いとは言えないのだけど、やはり人数でカバーしてるの。」
「大勢が関わったら人件費が嵩みそうだけど?」
「大勢だけど、彼等が農業に充てる時間は短く、一日十五分だけ畑、という人が何人もいるのよ。
 普段は営業や事務作業だったり店でレジを打ってる人達なのだけど、十五分間どんな作業をするかは管理担当者が決めていて、スーツ姿でも問題無く作業出来る様に工夫。
 農業公園を目指してるから色々な作物を綺麗な環境で育てて行く必要が有るし、仕事場から遠くては効率が悪いと言うことで店の裏の畑、本社近くの畑と言った形にしているの。
 その作業が気分転換になってると好評で、体を動かしながら頭は別の仕事をしてる人もいるのよ。」
「歩きながら哲学って感覚なのかな?」
「パソコンとにらめっこばかりでは思いつかないアイデアが出て来るのだとか。
 気付いたら一時間近く二つの仕事を同時進行してたことも有るそうで、畑作業を終えてから一気にパソコンでまとめた提案と言うのを見せて貰ったのが即採用で売り上げアップに貢献してたり。
 作業は単純な収穫作業だから、そちらのミスも無くね。」
「肉体労働と頭脳労働を同時進行なんて凄く効率的かも。」
「そんな人は極一部だから、非効率的な部分も有るのだけど、時間に追われる様な仕事は控え目にしたいと考えて来た結果なの、でも農作業との兼業が心のゆとりに繋がってるみたい。」
「ずっと農作業では大変でも、短時間なら負担どころか気分転換になるんだ。
 趣味で家庭菜園をやってるレベルなんだね。」
「社員さんの間では花や野菜を作る人が増えてるのよ。
 自宅で採れた野菜をお裾分けしたり、花の苗を交換し合ったり、会社の花瓶には何時も誰かが持って来た花が咲いていてね。」
「話に聞くところのブラック企業とは真逆なんだ…。」
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