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正月-288 [花鈴-29]

「姫の父君は、山林も含めここ一帯の土地を買いまくっているのですよね?」
「ええ、耕作放棄地を高値で売ろうとする厚かましい人もいるけど、多くの人と妥当な金額で売買契約を成立させてるの。」
「安く買えたとしても山林の管理はお金が掛かると聞きましたが?」
「ええ、父は昔の大地主の様になるつもり、と言っても名義は会社になるけどね。
 しっかり間伐をして綺麗な森に遊歩道、社員向けの住宅を建て、畑は農業公園に、本社所在地を住み易い観光地にと考えてるの。
 今までしっかり稼いで来たから初期投資が回収出来なくても、ここを暮らし易い山村に出来ればそれで良くてね。」
「さすが大社長だな、ブラック企業の社長とは器が違い過ぎる。」
「他の大企業が真似てくれたら、バランスの悪くなってる日本が良くなるのだろうけど…。」
「基本、企業は儲からないことにお金を使わないからな。」
「そうね、PRを兼ねての小規模な慈善事業をするぐらいよね。」
「ここは大規模ってことか?」
「知らなかったの?
 森林の広さは半端無いし、休耕田や空き家を買い上げているから…、姫、町の半分ぐらいは会社の物になったのですよね?」
「ええ、それだけ自力で維持出来る人が少なくなってたことが残念でも有るのだけどね。」
「いくら地価が安いとはとは言えかなりの出費なのでは?」
「そうでも無いの、自分で管理し切れなくなった人は、タダでも良いから引き継いで管理して欲しい、都会で暮らす子に相続させても重荷になるだけだからとね。
 家は修繕したり建て替えてこれから移住して来る社員の住まいになるのだから必要なの。」
「移住して来る人は多いのですか?」
「それなりにね、ただ、急ぐと色々不都合が生じるから少しづつ計画的に。
 そんな状況で里中さんの様に地元の人と住んでくれるなんて理想なのよ。
 広い家に老夫婦が二人だけで住んでいては無駄が多いでしょ?」
「この合宿所もそんな感じだったのですよね、立派な柱で。」
「林業がお金になった頃の名残なのよね。
 仕事はきつくても収入がしっかり有った頃の…。」
「社会情勢は変化してる、でも、余程円安が進んだとしても林業は難しいかもな。」
「姫はその辺りをどう考えているのですか?」
「そうね、木材の価格が上がったらラッキーって感じかな。
 父も観光をメインに考えていてね、間伐材の有効活用は検討してるのだけど。」
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