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二学期-239 [花鈴-24]

 考えてみると家族の普通って微妙だと思う。
 何故なら他の家族のことは表面的にしか知ることが出来無いからだ。
 自分としては普通な事が、一般的にはとても特殊だという可能性も有る。
 実際、私の父は大会社の社長な訳で、そんな立ち場の人は世の中に多くは無い。
 更に言えば、本社を過疎地に移転させた人は僅かだ。

「ねえ、絵梨、自分の家では当たり前で普通のことが、他の人の目には特別だったり異常だと言う可能性が気になってるのだけど。」
「う~ん、人それぞれなのだから有りうることかもね。
 都会暮らししている人達からしたら、私達みたいに過疎地へ移住した家族なんて理解出来ないかもよ。」
「そっか、確かにそうよね。」
「どうして、そんな話を?」
「田中社長の日常を知りたくなって、ひろっちに聞いたのだけど、彼からしたら普通のお父さんでさ。
 私の目には個性的な人に見えてるのだけど。」
「うちの両親だって他の人からみたら特殊でしょ、でも私的には普通の親で…、面白い視点かもね。」
「だから疑問を感じることも有る我が家の当たり前を調べてみたいかなって。」
「纐纈家ではどんな当たり前が有るの?」
「ハグして貰うこと、五年生なったのにね、普段他所では見かけないから普通のことでは無いかもと思い始めてさ。」
「ハグって、抱擁のこと?」
「うん。」
「うちでは無いな、うちの両親が弟達のことを私に任せっきりにしていることは姫も知ってるでしょ。」
「うん、それをお小遣い増額要求のネタにしてることもね。」
「はは、でも大社長が姫とのスキンシップをそこまでしているとは意外だったわ。」
「絵梨の感覚ではそうなんだ。」
「私の場合両親からのそう言ったスキンシップは弟が生まれて以来記憶に無いから全然分からないのだけどね。」
「それで寂しく無かったの?」
「全然、弟の面倒を見始めた頃は大人になった気がしてたから。
 弟の面倒を見るイコール大人、大人な私を子ども扱いするなって感覚がずっと続いてるかな。」
「そっか、何歳の頃からなの?」
「そうね、五歳ぐらいかしら、子ども扱いされるのが嫌なのは。」
「その性格に付け込まれ小枝子さんに利用されて来たのね。」
「そうかも知れないけど、私としては嬉しかったのだから問題ないわよ、お小遣いだってしっかり貰ってるし。」
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