SSブログ

夏休み-206 [花鈴-21]

 我が社の田中社長は多くの人から信頼されている。
 我が社が立ち上げられた当初は会長が小学生の私なので、遊び半分の会社だと思われていたが、社会福祉関連の事業を中心に事業所を買収し、そこの社員待遇を改善しつつ安定した経営の為にと、地元の人達に協力をお願いして行く過程で、その人柄が知られ信頼を得られたのだと思う。
 この地の活性化を全ての人が望んでいる訳では無いが、子や孫が就職の為に実家を離れないで済めばと考える人が、国道を通る人をターゲットにした展開を発表する度に協力を申し出てくれるのだ。
 店が出来たら買いに行くよ、と言って貰えるだけでも嬉しい。
 小規模発電所の建設を目指して設置した玩具レベルのミニ水力発電装置も悪戯されない様、皆さん気に掛けて下さる。
 大学生の夏休みが終わる頃には、それまで夜間は真っ暗だった所に小規模なイルミネーションが七か所設置された。

「田中社長、イルミネーションはご覧になられました?」
「勿論、息子に連れられ全部見に行きましたよ。
 十二月からの本格運用に向けての試験ですが、ミニ水力でも電源としては問題無さそうですね。」
「本格運用と言っても今年は、細やかなイルミネーションでどれだけの集客に繋げられるかの実験みたいなものです。」
「それぞれシンプルだけど一つ一つに背景となる短い物語を作り、見ている人がその主人公気分を味わえる、と言う案は上手く行きそうですか?」
「七つのチームが出来上がったばかりですから何とも言えませんが、絵梨は大学生に負けるつもりは無いみたいで、歩いて近付いて行く過程から楽しんで貰える様にしたいと話していました。
 イルミネーションエリアまでは足元を照らす照明を危なくない程度だけど抑え気味にしてとか、工夫して静かに動くイルミネーションを作ろうと大賢者達と相談しているのですよ。」
「姫は参加されていないのですか?」
「作品を審査する人達に変な忖度をさせたく有りませんのでチームメンバーには入りませんでした。
 思い付いたことが有ったら進行の遅れているチームに助言するかも知れませんが。」
「既に案をお持ちの様ですね。」
「いえ、ヒメボタルを観察出来るエリアをコースに入れたいと思ったのですが、冬の話ですので。」
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 8

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。