SSブログ

夏休み-188 [花鈴-19]

 私達がキャンプ場を離れてから一週間後、水野さんは契約書の案を持って来てくれた。
 仲間達に自分の事情を話し助言を貰ったそうだ。

「へ~、どんな助言を?」
「自分は、拾って貰うのだから給料は安くと考えたのですが、それでは自分の価値をアピール出来ないし、そんな姿勢を望まれる姫ではないと言われました。
 正直、金額を書いてみたものの、今の自分の価値に見合った額なのかは分かっていません。
 スタートは何も分からない新入社員ですから。」
「そうね、合宿所で暮らし、その管理もしながらと言うことなら妥当な額かな。
 この額なら他の社員とのバランスも悪くないわね、調べたの?」
「実は、みんなが勝手に盛り上がってしまいまして、社員全員に会って話を聞いておくべきだと。
 ですから社員の方々とは挨拶済なのです、仲間が付き添ってくれまして。
 社長さんは姫さまから聞いてるからと色々教えて下さいました。」
「田中社長とは少し話しましてね。
 大学を卒業した水野さんと大学を中退した水野さんに能力的な違いは有りますか?」
「能力ですか…、卒業まで履修する知識の差は有るのでしょうが、能力的にはあまり変わらないと思います、必要な情報は仕事に応じて調べ学んで行くものだと思いますから。」
「でも、社会的に大卒と中退では給料に差が生じるでしょ。
 そう考えたら、水野さんは企業にとって、お得な物件かもって話をしてたの。
 勿論、実際に働いて貰わないと評価は出来ないのだけど、水野さんなら仲間として受け入れられると言う声が届いていまして。
 現実逃避の一環だったとしても、今までここで活動してくれてた姿勢は悪くなかったみたいね。」
「まあ、親や元カノから離れられただけでなく、仲間と暮らす安らぎの空間でしたから皆でする作業が楽しくて。
 この先、楽しいことばかりではないと思いますが、過疎地の再生事業に携れることを誇りに思って頑張って行きたいと考えています。」
nice!(9)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 9

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。