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五月-48 [花鈴-05]

 徳沢さんとは色々な話をする様になった。

「研究室にはそれなりの人数がいて交代でやって来るのね。」
「小学校の規模を考えたら滞在する人数は増やせないとなってね、宿泊の都合も有るのだけど。」
「大学生の実習なのですよね、どんな感じで交代して行くのです?」
「ここへ来るメンバーが各自の都合に合わせて調整、単位を取れないと卒業出来ないからな。
 自分は最短でも大学の夏休みが終わるまでは居座るつもり、でも宿泊の都合が有ってどうなるかは未定でね。」
「空き家は有るわよ。」
「空き家が有るからと言って住まわせて貰えるかどうかは別問題だろ。」
「そうね、お化けが出るかも知れないし、古い家って趣は有るのだけどトイレはね…。」
「だよな、近所の古民家を見て思ったよ。
 でも、今のトイレだって電気が無かったら洗ってくれない、自給自足を考えたらそこはどうなんだ?」
「大丈夫よ、兄は発電も意識してるから。」
「へ~。」
「前はそれ程でも無かったのだけど、最近世界情勢の影響で電気料金が一気に上がったのでしょ。
 電気だって他人任せでない方が良いって、勿論我が家には太陽光発電のパネルが取り付けて有るのだけど、ずっとここに住み続けるのなら、色々考えないとって。」
「君のお父さまは過疎の問題も意識してここへの本社移転を決断されたそうだが、ずっとここに住み続けるおつもりなのか?」
「そのつもりが無かったらここの人達に対して失礼でしょ、ちゃんと地域行事にも参加してるのよ。
 古民家を買いとって社員さんと補修の相談もしてるのだけど、必ず地元の人にも参加して貰うの。
 社員さんの中には早々と、ここに自分の家を建てる計画を進めてる人がいるし。」
「本社はかなりの人数になるとか?」
「どうかしら、本社機能は名古屋支社と分担で本社勤務希望者の人数によってその比率が決まる。
 田舎暮らしを希望しない人に本社勤務を強制する様な会社ではないのよ。」
「あっ、原則単身赴任は禁止、オンラインで作業を進められるから転勤は最低限だったね。」
「ええ、工場勤務の人は通勤するしかないけど、他の人達はそれぞれの都合と合わせて相談してるの。
 父は臨時で雇う人達の待遇にも気を配る様に指示しているのよ。」
「ここへ来る前に色々な話を聞いたり読んだりしたのだけど、他の大企業では下請けにきつく臨時採用は人間扱いされない所も有ると聞いてね。」
「人を大切にしていたら、現場環境は悪くならないの。
 下請けに無理難題を押し付ける、なんてことをしていないから企業イメージが良くて、優秀な人が入社して来る、そこで大切にされるから真面目に働かない人は僅かなのよ、工場も含めてね。」
「そっか、読ませて貰った資料だけではぼんやりしてたけど、社長令嬢の口から聞かされて納得出来たよ。」
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