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ピーマン-38 [花鈴-04]

 私は、娘を心配そうに見ているLilyのお父さんに声を掛けることにした。

「伊藤さん、ここでの生活は如何ですか?」
「花鈴お嬢さま、極めて快適で本社勤務をお願いして良かったと思っています。」
「会社ではどの様なお仕事をなさっているのです?」
「色々やっていますが、海外の事業所などとの電話対応を任されています。
 英語に堪能な方は多いのですが電話になると少し勝手が違いますので。」
「難しいのですか?」
「面と向かって話す時は相手の表情などから無意識の内に色々な情報を得ているのです。
 電話ではそれが無く、初めて話す人だと誤解を生じかねません。
 極端な話、怒っているのか喜んでいるのか分からないことも有るそうです。」
「言われてみればそうですね、面と向かってなら指で物を指したりも出来ますから。
 Lilyからは沢山教えて貰っていますが彼女に問題はなさそうですか?」
「お陰様で佑理は明るくなりました。
 最初にお嬢さまのメイドになると聞かされた時は良く分からなかったのですが、とても良くして下さってるからだと知り安心しました。
 花鈴お嬢さまは人の器とか考えられたことは有りますか?」
「器?」
「纐纈社長を尊敬出来るのは社長の器を持っておられるからです。
 佑理の話を聞いていると、お嬢さまもリーダーとしての器を持っておられる。
 だから子どもだけでなく大人も集まって来るのでしょう。」
「リーダーの話は兄から聞かされていますが、まだ分かっていません。
 ここの大人達は優しい人ばかりなので相談に乗ってくれたり菜園を手伝ったりして下さいます。」
「私にもお手伝いさせて下さい、報酬はピーマンで構いませんので。」
「ふふ、ピーマンだけでは有りませんよ、野菜の自給自足を目指していますから。」
「始めは何の変哲もない田舎だと思ったのですが、こうした時間を持てる環境は悪くないです。
 娘共々よろしくお願いします。」
「こちらこそお願いします。
 ここだけの話ですが、もうすぐやって来る大学の学生達、その英会話能力がどれぐらいなのかに興味が有るのです、でも私では判断出来なくて。」
「国立大学の学生だと聞いてますのでそれなり話せると思いますよ、三流大学の学生とは違いますから。」
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