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ピーマン-35 [花鈴-04]

「何故か近所の大人達は花鈴ちゃんを見掛けると手伝いたがるのよね。
 纐纈社長と相談してこの菜園を開いた時は誰も関心を寄せてくれなかったのに、花鈴ちゃんが手伝いに来てくれる様になってからは自分の作業そっちのけで。」
「小枝子さん、仕方ないですよ、社長令嬢と言う肩書、人は肩書に弱いのです。」
「花鈴ちゃんはそのことについてどう思ってるの?」
「偉いのは大きな会社を動かしている父で有って私ではないです。
 私は、まだ社会の役に立てる大人になる為の学習をしてる段階ですから。」
「さすが優等生、絵梨も優秀だけど本音で生きてるから、そんな話はすらすら出て来ないのよ。」
「そんな風に育てたのはお母さんでしょ。」
「はは、社内報、小栗小枝子さんの記事そのままなのですね、本社移転予定地での生活紹介や個人でやってらっしゃるYouTubeチャンネルの影響で私を含めた本社勤務希望者が増えたのですよ。」
「ですが、問題はずっとここで暮らせるかですよね、纐纈社長。」
「別に永住しなくったって良いのですよ、しばらく暮らした経験が想い出として残るだけでも。
 ここにやって来る子ども達の中には、成長し海外へとその拠点を移す子が出て来るかも知れません、そんな彼らが子ども時代の風景として、この地を思い出してくれたら素敵じゃないですか。」
「う~ん、そのお言葉、次回の社内報向け記事に入れさせて頂きます。」
「それより今日のメインゲストは竹中さんだろ、竹中さん、ここでの生活には慣れましたか?」
「お陰様で落ち着きました。」
「お仕事面での不自由とかは?」
「ネット環境さえ整っていれば出来る仕事ですので問題有りません。
 それより息子の表情がここに来てから随分変わりまして、やはり能力の高い同世代の子の存在は大きいと痛感しています。
 東京から越して来て良かったですよ。」
「苦労されてたのですね?」
「子どもの才能は伸ばしてやりたいじゃないですか、でも日本の教育制度にはそんな考えは無いと改めて思い知らされました、自分の子ども時代と何も変わって無くて。」
「教師に余力は有りません、花鈴は先生の手助けもしているのだろ?」
「うん、この地を学校から変えて行こうと考えてる大人達が教頭先生を動かしてくれて自分達の意見が通る様になったからね。」
「やり過ぎてはいないよな?」
「どうかしら、でも五月になったら研究室の大学生が来るでしょ、先生達はそれにどう対処するとか、色々迷ってるみたい。」
「情けないのよね、ただ教えられて来た様に教えてるだけだから、花鈴より教えるの下手だし、特別実験校になることについて行けないのよ。」
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