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ピーマン-34 [花鈴-04]

「皆さん、そろそろ焼けて来ましたよ。」

 五家族の大人達が小枝子さんの指示で動いていたのでバーベキューの準備は早かった。
 特にお父さんとお兄ちゃんは何度もやってることなので手際が良いのだ。

「まずはピーマン、うん、美味しいわ、これはビニールハウスで栽培されたものなのね。
 小枝子さん、ここにビニールハウスは建てないのですか?」
「協力してくれてる人次第かしら、冬場に遊びを兼ねて来てくれる人が増える様なら考えてみても良いのだけど。」
「田中くんを農業に目覚めさせることに成功したら、ビニールハウスの名前はひろっちハウスにしてもいいよね?」
「ひろっちはどうなの?」
「お嬢様からこの家庭菜園に植えて行く野菜の話を聞いて興味は有ります。
 スイカやトウモロコシ、トマトなども栽培するそうで。」
「ピーマンのついでにね。」
「纐纈社長、社長がここを手伝うことも有ると聞きましたが。」
「田中さん、私が手伝うのは主に食べる方ですが、ちょっとだけなら畑の作業は楽しいものですよ。」
「そうですか、家内とは折角田舎暮らしをするのなら家庭菜園に挑戦したいと話していたのです。
 ここは家族寮から近いですし私達も休日にお手伝いさせて頂けたらと思うのですが如何でしょう?」
「それなら耕作地を広げましょうか、隣の耕作放棄地も購入済、小枝子さんの取り組みを見ながら考えようと思っていたのです。」
「田中さん、この畑も纐纈さんに借りているのですよ、私達には農業体験と言う企画が有るのですが、元は花鈴ちゃんの一言だったそうです。」
「はは、花鈴が二年生の時に行ったいちご狩りで、美味しく実った所を食べるだけだなんて何か違う気がすると言い出しましてね。
 それなら自分で栽培してみようと、引っ越しの予定は有りましたので、この土地を購入したのです。
 花鈴、イチゴの収穫は何時頃からになるんだ?」
「五月の終わりぐらいかしら、去年は知識不足で今一だったけど、その失敗を活かしてるから期待して良いわよ、実は小さいけど、その方がリスクが少ないの。」
「花鈴お嬢様、やはり自分の手で栽培するのは楽しいですか?」
「田中さん、お嬢様はダメよ、そんな呼ばれ方をしたら隣の土地を耕しておきなさいと命令しそうになるでしょ。
 仕事としての農業は大変そうだけど無理の無い野菜作りは楽しいし、近所の人達が手伝ってくれたり採れ過ぎた大根をお裾分けしてくれたりするのですよ。」
「う~ん、花鈴お嬢様の下で菜園に取り組むのは楽しそうですね。」
「はは、日頃部下に指示してるからか?」
「ええ、纐纈社長、息子の浩紀から毎日の様に花鈴お嬢様の話を聞かされていましてね。
 私も仲良しグループの一員になりたいのですよ。」
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