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新学期-15 [花鈴-02]

 交流会のゲームや歌を新一年生が楽しんだがどうかは分からないが、少なくとも来賓を始め見学していた大人達には喜んで貰えたみたい。
 新一年生をゲームで楽しませ、英語の歌まで歌ってしまう私達は、過疎化を止め元気な田舎作りを考えてる大人達にとって希望の星なのだとか。
 歌の後そんな話をして来た大人達からはお父さんに対する感謝の言葉も。
 またか、と思いつつ、お父さんから教えられたことを思い出す。
 会社の本社移転はニュースになるぐらいの出来事で、この地が注目されたそうだ。
 本社や寮の建設には極力地元の木材を使い地元の人に働いて貰い、会社のお金をここで使うことでこの地が少し潤い、今後会社が払う税金の一部はこの市を少しばかり潤す。
 それで感謝されているのだが、娘としてはお父さんが人から感謝されることをしてるのは嬉しい。

「花鈴、お肉、食べに行こうよ。」
「絵梨、実加ちゃんや健くんは良いの?」
「うん、今日はお父さんとお母さんが来てるから大丈夫。
 お肉は早目がお勧めだそうよ。」
「量が少ないとか?」
「足りなくなったら、どっかの冷蔵庫から猪の肉が出て来るけど、入学式を記念しての酒盛りが始まるでしょ、それまでに食べておいた方が良いのよ。」
「ぼたん鍋か、清六おじさん達頑張ってるのかな。」
「頑張って貰わないと、学校で猪とご対面なんて嫌だわ。」
「そうよね、でも、どうして入学式を記念して大人が酒盛りをするのか疑問じゃない?」
「入学式は単なる口実、でも、うちみたいに移住して来た家族にとっては必要なことだそうでね、お母さんから言われたら納得出来なかったけど、お父さんが説明してくれたから。」
「絵梨のお母さんはお酒に関する本も出してるけど、そんなに飲むの?」
「飲むとくどくなるのよ、酔っ払いの相手なんてするものじゃないわ、花鈴の両親は飲まないの?」
「絵梨のお母さんが書いた本を読む前から、お酒はほどほどにを実践していたみたい。」
「そこなのよね、自分でお酒はほどほどにって書いておきながら…。
 まあ今日は仕事も兼ねていて、お父さんがフォローしてくれるのだけど。」
「仕事?」
「田舎へ移住してからの報告が雑誌に連載されてるし、執筆中の本も有ってね。」
「お父さんも忙しいのでしょ?」
「今はそうでもないみたい、仕事でパソコンに向かう時間が越して来た頃より随分減ったそうでね。
 清六おじさんの手伝いとかも考えてるのよ。」
「へ~、猟師になるの?」
「罠猟のね、大変みたいだけど、ここでは必要なの。」
「猪はどんどん増えるのでしょ、私達が食べても追いつかないぐらいに。」
「うん、その肉を都会のお店に売る企画を、お母さんと進めてるのよ。」
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