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近衛予備隊-342 [高校生バトル-77]

 加藤さんとは電力会社の社長に就任した頃からの付き合い。

「加藤先生、工学部発電研究室の室長をお願いすることになるのですが、大学の一部となっても何も変わらないのですか?」
「いえ、高校生と大学生を分けて考えています。
 高校生には今まで通り、会社の電力部門で働いて貰う前提での学習と実習になりますが、学習が進んでいる生徒は大学生に、現在発電関連で働いてる人からも大学で学びたいとの希望が出ていますので、彼らには大学生か研究生になって貰います。
 大学生になる子には今まで高校生に教えて来なかったハイレベルな学習に取り組んで貰う予定です。
 高校生には小規模発電所の建設現場やその運用を実習として体験して貰って来ましたが、大学生には我々がどんな考えで小規模発電所を設計して来たかを理解して貰おうかと。
 その過程で個々の資質を見極め、才能ある子には設計に挑戦して欲しいと考えています。
 勿論、遠江大学の関係者がバックアップしてくれます。」
「前から気になっていたのですが、遠江大学の方々にとってその様な活動をすることに何らかのメリットはあるのですか?」
「彼らは喜んでいますよ、この国に建てて来た小規模発電所は彼らのアイデアから始まっていますが、日本では建設出来なかった物をここで建設、その運用データは彼らの研究に役立っています。
 それぞれの発電所には設計に携わってくれたチーム名を冠した名前が付けられていますので愛着もひとしおだとか。」
「運用して上手く行かなかったことも有るのですか?」
「発電が出来ないなんてことは有りませんが、予定していた出力が出せないことは有りました。
 理論的には最善だと思っていたのが、実際に運用してみると想定していなかった要素が絡んで思った程の出力を出せなかったりするのです。
 そこから、タービンの形状を検討し直したり、水力の場合は上流側の環境を整えたり。
 運用が始まって完成なのでは無く、そこから改良が始まるのです。
 大学生にはその改良の検討にも加わって貰いたいですね。」
「能力的に日本の大学生に比べ劣ると思うのですが、その辺りは如何でしょう?」
「近衛予備隊の初期と比べたら、先輩が後輩の指導をする形で生徒達のレベルはかなり上がっています。
 予備隊に入隊した十二歳の頃から、電力会社で働く意思を持って学習に取り組んで来た子がいまして、十六歳になった彼は学習チームのまとめ役をしてくれています。
 大学が始まったら大学生になって貰い、高校生の指導も担当して貰おうかと思っています。」
「日本の学校は年齢を基準とした学年で分けられているそうですが、先生はここのシステムをどう考えておられるのですか?」
「大学がスタートして研究室に関わる子が増えるとしても、教室で四十人の生徒にまとめて授業を受けさせる様なことはしません。
 詩織さまの提案に沿って教育活動を行って来ましたが、学ぶ者の気持を考えた王立高等学校の教育システムに間違いは無いと考えています。
 ただ、残念ながら日本では大学入試に拘り過ぎていますので理解されないでしょう。」
「先生はここでの教育活動に満足されてると?」
「ええ、学習意欲の無い子の相手をすることが一切ないので楽しいです。
 日本の三流大学で教えたことが有ったのですが、単位を取る為だけに受講している学生ばかり、大学に合格する学力は有っても、能力的にはここの高校生より劣るかも知れません、大学として卒業させて行かないと経営が成り立たないとかで、単位を与えていましたが…。」
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