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近衛予備隊-275 [高校生バトル-70]

「死刑制度は?」
「廃止しました。
 無給で働かせられる貴重な労働力ですし、死刑を執行する人の気持ちを考えたら良い制度ではないと考え、前大統領が自分を後継に指名した時点で死刑の執行を停止して貰いました。
 凶悪な犯罪を犯した重罪人は他の受刑者と区別し、山奥の特別な刑務所で暮らして貰っています。
 監督官が大変ですが、近くに店が無いことを、お金を貯め易い環境だと理解した人や山の環境に憧れの有る人など希望者はいるそうです。
 今は火力発電所の燃料を確保しながら自分達の刑務所を広げつつ、自給自足を目指して農業と養鶏に取り組んでると聞いています。」
「作業中に逃亡しようとは考えないのかしら?」
「逃げても麓まではかなり長い一本道で、途中に監督官の宿舎が有ります。
 直ぐに発見されることは刑務所に向かう道中で把握出来ているでしょう。
 道を外れ森に入って逃げるのも、かなりの根性と知識や技術が無いと無理なのです。
 刑務所の塀の外にもう一つの塀が有るみたいもので、言わば天然の刑務所なのですよ。
 凶悪犯ばかりですので全員にGPSを付ける話も出ているのですが、予算を考え、しばらく様子を見ることにしました。」
「今の所脱走する受刑者は出ていないのね。」
「ええ、ただ、自殺者は出ています。
 一生出られませんから問題行動を起こすと刑期が伸びる代わりに食事抜きや鞭打ち、他の刑務所と違って酒などの差し入れは一切認めていません。
 凶悪犯罪を犯すと、そんな死にたくなる様な環境で暮らすことになると国民に伝え、犯罪を抑止し被害者家族に納得して貰っています。」
「罰なのね…。」
「それでも、その環境に馴染み始めてる人もいるそうで、楽しみは食事ぐらいですから養鶏や農業は手を抜かないのだとか、刑務所の拡張も自分達の行動範囲を広げることになると考え、真面目に働く人が増えて来てるそうです。
「その方が賢いわ、不自由でも自分達の生活環境を良くしようとしてるのでしょう。」
「刑務所の拡張が進んだら農地と養鶏場を拡大、火力発電所の燃料だけでなく鶏や野菜を出荷する予定が有り、そこに至ることが出来たら少しばかりのご褒美を考えています。
 鞭ばかりではなく、時には飴が有った方が生産性が向上しますからね。」
「これから凶悪な犯罪を犯したして捕まった人も全員そこへ?」
「いえ、人数が増え過ぎると暴動の恐れが有りますし、落ち着いて働いている受刑者の環境を悪化させることにも成り兼ねませんので、近くに同じ様な刑務所を建設して行きます。
 その作業は今の受刑者達に行って貰いますが、次の刑務所には落ち着いて働けない受刑者と、新規の受刑者を収容、真面目に働いてる受刑者とは分けて行きます。」
「そのことは彼らも知っているの?」
「計画は伝えて有るそうですが、ご褒美は煙草一本とお酒少々としか。
 利益が出始めたらもっと上げても良いと思ってるのですが、変に期待させ無い方が良いとかで。」
「そうよね、豪華なご褒美を夢見ていたのに煙草一本とお酒少々だったら暴動を起こしかねないわ。」
「まあ、一度死刑判決を受けた人は一部を除いて大人しいそうですけどね。」
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