近衛予備隊-227

　問題はそれなりに収益を上げているホテルを新たな会社組織にどう組み込んで行くかと言うことだったが、俺達の帰国後に話は進み、近衛の担当者は一早く新会社のホテル部門に吸収される道を選択したオーナー達と今後の観光業を相談している。
　その情報はシャルロットが確認してくれていて…。

「シャルロット、向こうの近衛と連絡を取ったのだろ、ホテル関連はどんな感じだった？」
「老朽化の進んでるホテルが多いからか、まだ吸収合併交渉が進んでいないホテルのオーナーも、ホテル部門としてまとまって行く方向に傾いてるそうよ。
　裏でシェリルが動いてくれてるみたいでね。」
「シェリルからのメールは見たよ、観光客の減少から設備投資が充分出来ず、それが更なる観光客の減少に繋がったと言う負の連鎖だろ。」
「ええ、当然オーナー達の収入も減ってる訳で、吸収合併によって新会社の株式を手に入れた方が得だと判断し始めたみたい、新会社のホテル部門が動き出したのを見てね。」
「ホテルをどう改修して行くのか、サンプル的に取り掛かってるホテルだな。」
「会計システムをここのホテルと同じにしたから、現金を扱い偽札に気を配る作業が無くなっただけでなく仕入れ管理システムの導入で効率化、ホテル部門に加わるホテルでは、今までホテル毎に行っていた予約に統一システムを導入することで観光客の利便性を高めるだけでなく確実にコストを下げられると説明しているそうよ。
　無駄が減って収益が伸びれば、ホテルの吸収合併時に得られる株式、その配当が期待出来るでしょ。
　その額が例え少なくても、ホテルを自分で維持して行くのが難しくなっていたのだから、自分のホテルを手放すことに躊躇していた人達も考えを変えつつ有るみたい。」
「あの国へ旅行したいと思ったらホテルを選び予約するのは一つのサイトで済ませられる、そうなったら我々と無関係で営業を続けたいと思ってるホテルはかなり苦しくなるだろうな。」
「ホテルの半数ぐらいが私達の傘下となり改修を進めながらシステムを整え宣伝して行ったら、残ったホテルはいずれ立ち行かなるなるかも知れない、ただ、女王を頂き王国への転換による効果で観光客が増えると、そんなホテルでも恩恵を得られるかも。」
「ホテル関係の体制が整うのには時間が掛かるのかな。」
「どのみち設備投資して改修工事となると時間が掛かるのだから急ぐ必要は無いでしょ。
　既に会計システムなどを先行導入して建物の改修を後回しにするホテルが出て来そうなのよ。」
「早く決断してくれたオーナーにはそれなりのメリットを提示出来てるのか？」
「今後どうなって行くのかは微妙だけど、少なくとも会社での役職は高い所からのスタートに、収入は今後の売り上げ次第かしら。
　観光客が減っていたから、傘下入りを早く決断したオーナー達は提示された給料額を簡単に受け入れてくれたと聞いてるわ。」
「もしかして、ホテルオーナーでも収入は大したことなかったとか？」
「かもね。」
「早かった人達は詩織女王にすがった人達だろうな。
　国の状況を見極め、例え自分達の収入が一時的に減っても長い目で見たら、国を王国として立て直せると考えたのだろう。」
「そんな人達なら会社の幹部にと期待したいわね、未だに国の置かれていた状況を理解出来ていない人がいるそうだから。」