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近衛予備隊-119 [高校生バトル-54]

 大統領が戒厳令を発令し大胆な改革を断行したからと言って、全く犯罪が無くなったと言う訳ではないが、町の様子を伝えるニュース番組では犯罪の減った今の状態を維持しようと言う気運が市民に広がり始めていると伝えていた。
 それにはプリンセス詩織からのメッセージも影響していると思う。
 プリンセスは治安の良さを維持して行く為に一人一人の意識が大切だと説いたのだが、彼女の指示によって安定した雇用の場を拡大していることは多くの市民に知られていること、口先だけの人に貸す耳を持たない人にとっても彼女の言葉には重みが有る。
 雇用の場を本格的に拡大して行くまでには時間が掛かったが、この国へ商品を輸出しているプリンセス詩織に関係する会社の協力は大きかった。
 それまで完成品を船便で送って来ていたのを、徐々に半製品をこちらの体制に合わせて輸送し、港近くに確保した工場で完成させると言う形に、それを送られて来る商品の完成度を少しずつ下げる形で充実させてくれた。
 始めの内は最後の個別梱包作業だけをこの国で行っていたのが、製品最後の組み立て作業まで担当すると言った具合に。
 その過程で技術指導にも要員を割いてくれたおかげで、毎月従業員を増員しながら無理なく完成品の出荷が出来ている。
 また、売れ筋商品は周辺諸国へも営業をかけ販路を広げているので、工場からの出荷額は右肩上がりに伸びているのだが、そんな商品は一つや二つでは無いのだ。
 プリンセスの関連企業は、必ずこの国の平均賃金を上回る給料を提示してくれるので、人気の職場となり離職率は極めて低いと聞いている。
 低賃金でスタートした元受刑者が働く工場や農場も、今では平均賃金並みになって来てるのだが、それはプリンセス詩織に関係する多くの人々が商品に付加価値を付ける工夫をしたり効果的な宣伝を考えたりと動いてくれた結果だ。
 また、俺達の村が農地改革を進め、高値で輸出出来る果実栽培に力を注げるのも、日本向けの加工も含め販売戦略を考えてくれる協力企業の力による所が大きい。

「外国からこの国へ進出して来る企業は、この国の安価な労働力が目当てだと聞いていましたが、詩織の会社は少し違うのですね。」
「まあね、もう少し賃金を上げても良いのだけど、一気に給与水準を上げると、それはそれで問題が起きるから控えめにし、その分は設備投資に回して貰っているの。
 周辺諸国への完成品輸出や日本への果実輸出が順調に伸びて来てるからそれぞれの企業も儲かっているのよ。」
「今まで進出して来た企業は、給料を抑え大した投資をしないで丸儲けだったのでしょうか?」
「それはそれで企業としては伸びなかったのでは無いかしら、労働者のモチベーションが上がらないし、半端な設備投資では作業効率が上がらず、生産性が悪いままでしょ。
 うちでは更に社員教育や社員の子弟に対する教育にも力を入れ将来をも見据えた企業運営を心掛けて貰ってるから一味違うのよ。」
「今後、この国の安い労働力に目を付ける海外企業は増えるのでしょうか?」
「気付かれる前に少し賃金を上げておきたいのだけど、失業率を下げたいから誘致も考えないとね。
 ホントはこの国の人自らが起業し雇用の拡大を目指すのが理想なのだろうけど、今までの教育環境がそこにまで至って無かったから…、ジョン、課題はまだまだ多いのよ。」
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tomi_tomi

今年1年訪問・nice! 有難う御座いました。来年もよいお年をお迎えください!
by tomi_tomi (2021-12-30 12:43) 

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