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近衛予備隊-118 [高校生バトル-54]

 結局、戒厳令が解除されるまでに数か月を要した。
 自分達の村では戒厳令下に行われた取り締まりの効果は全く実感出来ないが、町の治安はかなり良くなり、殺人や傷害などの事件は激減したそうだ。
 その代わり刑務所はどこも定員オーバー、受刑者の仕事の一つは刑務所の増築と出所後の仮住まいや作業場を建てる作業で、職業訓練の一環として行われている。
 特にこの村では刑務所の隣に広がる土地を利用し、刑務所からの出所後、自立した生活の目途が立たない人を中心にした自立支援施設の拡充を図っているのだが、その原動力となっているのは出所したばかりの人達、まだまだ残ってる荒れ地の整備をしたり、新しくこの地に出来たマーケットやマーケット向けの商品を生産、製造する施設で近衛隊メンバーによる指導の下働いている。

「ジョン、新しいマーケットはどうだった?」
「特に問題は無さそうだよ、研修を兼ねてるから従業員が異様に多かったけどね。」
「これからオープンして行くマーケットで働いて貰っても大丈夫かしら。」
「多分ね、元々ここに来てる人達は生きて行く為に軽い罪を犯した人ばかりで、真面目に働ける仕事が有れば犯罪を犯そうとは思わない人が多いと聞いていたが、今日見学に行って改めてそれを実感した。
 殺人や傷害事件を起こした人がいないからか、言われなければ元受刑者とは分からない人ばかりだったんだ。
 ここで研修を受け一般社会で普通に暮らして行けそうな人は各地のマーケットへ、その自信を持てない人は、しばらく刑務所の有るエリアで暮らすことになる。」
「マーケットが出来たから、あそこから出ないでも生活出来るのね、でも出入りは自由なのでしょ?」
「勿論さ、ただ、あのエリアは今までの町暮らしがあまり良いもので無かった人達にとって、男女問わず似た様な境遇の人ばかりで気の休まる場所だそうだ。
 暴行を受けながら犯罪組織で働かさせられていた人は、真面目な警察官ばかりで安心出来ると話してたよ。」
「元受刑者で有りながら、被害者でも有ったのね。」
「ああ、そんな人達は町へ戻るのではなく、この村の住人になることを希望していた。」
「その希望は叶えてあげるの?」
「土地に余裕は有るからな、昔、一度開拓されて平らになってる荒れ地だけでなく、その奥の土地も造成すれば使えそうだと聞いてる。
 土壌改良を進めれば高く売れる作物を栽培出来るし、工場を建ててマーケット向けの商品を製造しても良いだろう。
 住まいは仮設でもトイレとシャワーが綺麗な今の住宅をとても気に入ってるそうでね。
 衣食住の心配が要らないから、給料は今のままで構わないそうだ。」
「社員としての給料は最低ランクで、マーケットのプリペイドカードへ給料の八割以上入金されても不満はないと?」
「真面目に働けば昇給するし、今はマーケット以外で買い物することは無いだろうからな。」
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