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近衛予備隊-26 [高校生バトル-45]

「生活水準と言われても、他と比べる事が有りませんでしたのでまだ良く分からないのです、お金持ち国は生活環境が良くて寿命が長いと聞きましたが、生活水準が高いと言うのはそう言う事なのですか?」
「そうね、基本的にはそんなとこかしら、ただ他の国を知らないシャルロットには理解しにくいかもだけど、微妙な問題が有って簡単な話ではないのよ、今の状態が幸せなのに生活水準を上げることでそれを壊してしまう可能性も有って。」
「良い事ばかりでは無いのですね?」
「ええ、説明しにくい話なんだけど…、この国は植民地化が進むまで大きな争い事は無かったのでしょ。」
「大きな争いは無くても小さなトラブルは絶えなかったそうです、大勢をまとめ上げる強いリーダーがいなかったから部族間の結びつきが弱く、あっさり植民地にされてしまったと聞いています。」
「それでもそれなりに幸せに暮らして来たのでは無いかしら?」
「どうしてそう思うのですか?」
「自殺率って分かるかな?」
「自殺は…、ルーシー、話題になったのは随分前のことよね?」
「滅多にないことだから…。」
「この国の統計は信頼性が低いのだけど、それによると自殺する人はとても少ないの、生活水準の高い国と比べてね。」
「生活水準の高さが自殺に関係しているのですか?」
「そんな傾向が有りそうな気がしてね。
 動物の本能に逆らう自死と言う行為の裏に何が有るのか、私には分からないのだけど。」
「私達の生活環境が良くなることが、そんなことに繋がるとは思えません。」
「ええ、もし影響するとしたら、うんと先のことでしょうね。
 ただ、人の幸せってシャルロットはどう考えてる?」
「私は、ジョンと一緒に居られたらそれだけで…。」
「副隊長としての職務に生き甲斐を覚え、より自分の力を発揮したいとか考えた事はない?」
「まだ入隊したばかりですし、副隊長になったのもジョンの手助けが出来ると思ったからです、メアリーが近衛隊の一員となったのには、何か思いが有ったのですか?」
「そうね、入隊する前に働いてた会社は給料が良かったのだけど、ふと気付いたら自分をすり減らしてる様に感じてね。
 そんな頃にプリンセス詩織のことを知り調べまくったの、遠江王国へも行ったのよ。」
「近代的な乗り物が走る街並みが有るのだけど、農業にも力を入れているとか、でも、この村とは違い過ぎて動画では現実感が有りませんでした。」
「実際、綺麗な町でね、ヨーロッパの街へ旅行に行った事も有ったのだけど全然違うの、ゴミは落ちて無いし至る所に花が咲いていて、でも一番の違いは人間性の違いかな。」
「人間性?」
「社会の一員としてね、遠江王国の人達は困ってる人が居たら手助けを試みるし、ゴミが落ちてたら拾う、花壇の手入れは大人から子どもまで気付いた人がしているの、報酬目当てでなく自然にね。
 河川敷が公園になってて芝生が綺麗だったけど、維持管理は役所ではなく市民団体がボランティアで行ってるの。
 芝刈り機を使ってる人に聞いたら、たまの事だから負担は少ないし芝刈り機に乗ったり草刈り機を扱うのは面白いそうでね、そして作業後に皆でするバーベキューは格別だからと言って私を誘ってくれてね、そこでは色んな話を聞かせて貰えて楽しかったわ。」
「初対面の人を誘うなんて…。」
「私が旅の目的を話したから、彼は私の力になりたいと考えてくれたの。」
「自身に何のメリットもないのにですか?」
「ええ、でも私が詩織近衛隊のメンバーになったことをとても喜んでくれてね、仲間の私が遠く離れた国で活躍してることが嬉しくて励みになるのだとか、今もメールのやり取りを続けているのよ。」
「仲間か…。」
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