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バトル-78 [高校生バトル-08]

「お父さま、雅ちゃん達の住んでたマンションを引き払う手筈は一通り整いました。」
「有難うね、友香さん、大変だったろ。」
「いえいえ、普通では体験出来ない事を経験出来て面白かったですよ。
 警察は部屋から覚醒剤とか麻薬を押収したそうです、恐らく組関係者にも場所を教えて無かったみたいで、雅ちゃんはお父さんの知り合いに持ち去られた物が有ると話してましたが、その人達も気付かない様な所に隠してあったそうです。」
「それを見つける警察もなかなかのものだね。」
「父親は事故死する前から薬物関係で捜査線上に浮かんでいたそうで徹底的に調べたそうです、事故死ではなく殺害された可能性も残っているとか…。」
「雅ちゃん達がそう言う世界との関係を完全に断ち切れれば良いのだがな。」
「ですね、ただ遺産相続の手続きは少々厄介みたいです、表向きの借入金は無いのですが、後から個人的な借金返済を要求される場合も有るとかで、その辺りも含め難しい話は弁護士の先生にお任せしました、実際の事例を教えて頂いたのですが私達の住む世界とは違う話で興味深かったですよ。」
「雅ちゃんにはどの程度話したの?」
「教えても問題が無いと大人達で相談した内容は全て弁護士の先生が話して下さいました。
 小五ですがしっかりした子です、施設の職員にとっては厄介な子だったみたいですが、厳し過ぎるぐらいに躾けられていたのでしょう、誰と話しても言葉遣いは悪く無かったです。」
「児童養護施設の職員も大変だろうね、精神的に最悪の子達を預かって…、頭の良い子ほど厄介なのかもな。」
「それは有るかも知れませんね、太一くんはまだ二年生なので…、でも、それまでの環境によっては精神的な障害を負ってる子もいるそうです。」
「ああ、雅ちゃんも夜中に嫌な夢でも見るのだろう、泣き叫ぶ事が有ってね。
 普段は明るく振舞っているが、心に傷を負ってる子なんだ。」
「そうでしたか気付きませんでした…。」
「昼間は誰かが相手してるからな、三郎が帰って来ると一緒に居たそうにしてるが我儘を言わずに料理の手伝いや弟の面倒をみてるよ。」
「環境さえ良ければ、超良い子なのですね。」
「ただ、その裏には父親からの暴力を伴う躾が有ったみたいなんだ、絶対顔や体に傷を付けず痛い思いをさせると言うやり方でな。」
「流石に怪我をさせるのは良くないと考えていたのでしょうか。」
「いや、単に商品価値を落とさない為だと言われてたそうだ…、実の娘では無いとは言えな…。」
「商品ですか…。」
「太一くんが跡取り息子として可愛がられるのとは対照的な扱いを受けていた訳だ。
 まあ、始めは三郎に抱きしめて貰いたくて話を盛っていると言う可能性も考えたが、太一がお姉ちゃんはお父さんにいじめられてたと話してくれてな。」
「そうでしたか、やはり前の暮らしは忘れたいのですね。
 机とかずっと使ってた物をこっちに持って来て使っても良いし、気分を一新して今まで使って来たものはリサイクルに出し、新品を買い揃えても良いと話したら、我儘だと思いますが以前の物はお母さんとのアルバムだけで他は全部忘れたいと、真剣な表情でした。
 そのアルバムからは父親の写真を全て切り取って破棄し、お母さんとの写真だけに、そしてほとんど覚えていないと言う実の父親の写真を、お母さんに貰った一枚だけなのと言いながら貼り…、三郎にせがんでプリントして貰った私達との写真を…、もう…、愛おしいと言うか…。」
「私達は幸せ過ぎだな、もっと厄介な子を引受るつもりだったのに素敵な娘が増えてしまって、はは、歳のせいか涙もろくなってしまったよ。」
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