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バトル-77 [高校生バトル-08]

「あのね、三郎お兄さま。」
「はは、雅ちゃん、もっと気軽に呼んでくれて構わないよ。」
「ううん、私、嬉しくって…。」
「涙が出る程ってこと?」
「うん、YouTubeを見たら、お兄さまがとても人気者という事が分かって、当たり前ですよね、こうして話してても何か自然な優しさが…、施設の人達も厄介者の私に優しく接してくれはするのですよ、でも…、分かるじゃないですか、仕事として優しく振舞ってるのだって。」
「そんなに厄介者だったの?」
「施設では何時もイライラしてて、職員も子ども達もなんか嫌で。
 死んで欲しいと思ってた戸籍上の父親だった人から解放されるのが、大好きなお母さんとの別れと一緒…、何か良く分からない所に入れられたら、周りはなんかパッとしない子ばかりでさ。」
「そっか…。」
「ね、ねえ…、私の新しいお父さんはどうして養子を迎えようと思ったの?」
「うちはとても幸せな家族なんだ、義兄弟姉妹も含めてね。
 だから、その幸せを少しだけでも人に分けて行きたいと考えて、そしたら雅ちゃん達を紹介されたのさ。」
「ふふ、私が悪い子だったから厄介払い出来る、ラッキーと思ったのかも、悪い子でいて良かったのかな。」
「う~ん、確かに春子姉さんは職員さんから如何に厄介な子なのかを色々聞かされたと言ってたけど…、今も猫を被ってるのかな?」
「どうかしら、少し浮かれていると言うか…。
 優しいお兄さんとお姉さん、新しいお父さんが出来ることになって、ふふ、ニヤニヤしそうになるのを押さえるのに苦労したのよ。」
「別にニヤニヤしてたって良いじゃないか。」
「それは駄目なの、ずっと不機嫌だった子が急に変わった思われたら嫌でしょ。」
「そう言うものなの?」
「うん、そう言うものなの。
 私にとっての新しい家族はみんなニコニコしていて…、私の前だからと言って特別では無かったのでしょ。」
「どうかな、雅ちゃんが可愛いから何時も以上だったかも知れないよ。」
「なんかな、戸籍上の父親だった人は何時も怖い顔をしてたし、今にして思えばお母さんもあまり笑ってなかった…、だから私も…。
 でね、お兄さまと初めて会った日にね、色々考えたんだ。」
「そりゃあ考えるだろうな、初めて会った人の家族になる話しだから。」
「ねえ、シンデレラってさ、いきなりお姫様になったでしょ、ちゃんと王子様の期待に応えらたのかしら、そう言う教育を受けて来た訳では無く、いきなりお姫様になって実は苦労したのかもって思わない?」
「はは、面白い視点だね、言われてみれば大変だったのかも。」
「やくざの娘が市長候補の娘になろうとしてるのよ。」
「市長に立候補すると言っても普通のお父さんだよ、僕らは紹介されたら心身にハンディを持つ子でも受け入れようと考えていたのだからね。」
「へ~、そうなんだ。」
「僕がぼんやり考えてたのは、雅ちゃんの環境が変わって、少しは幸せな気分になってくれるかなって事、周りにどんな人がいるかで、成長の仕方が変わると思わないか?」
「うん、私はもう変わり始めてるよ、どん底の気分から…、ふふ、みんなの弟が、私のお兄さまになるのですもの、妹として恥ずかしくない様にしないとね。」
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