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バトル-52 [高校生バトル-06]

「友香さん、こちらに越して来て慣れましたか?」
「そうね、まずはゆったり過ごそうって一郎さんが言ってくれ、二人で散歩とかもしてるの。
 彼が紹介してくれるから少しづつ顔見知りが増えてるのだけど、都会では考えられない顔の広さなのね、彼って。」
「高校までは、学園祭だけでなく、地元のお祭りも仕切ってたのですよ、次郎兄さんや大輔さんと一緒に、それが有ったからサポートカンパニー立ち上げの時も直ぐに協力者が集まったのです。」
「そっか、何にしても環境を変えた事は私にとって良い刺激になってるの、春子さんは大学生になってどう?」
「花の女子大生と言う感じでは有りませんね、先輩方からのお誘いは多いのですが、真面目なものばかりです。」
「思ってたのと違って残念とか?」
「まあ、大学に重きを置くつもりは有りませんから。」
「婚約の話はしたの?」
「はい、大輔さんが迎えに来てくれたりするので、同学年とは少し距離が出来ています。
 彼らが学生社員になるまでは、先輩の学生社員と仕事の話しとか…、教職課程の話もしてるのですが、友香さんは教職課程を経て社会科の先生になる資格を取ったのですよね。」
「ええ、春子さんは教職課程、どうするの?」
「教育には興味が有りますが、教員になる気は全く有りません…、友香さんは兄と結婚する事になって教員への道を諦めたのですか?」
「いいえ、諦めたと言うのではなく、高校生の頃、教師の労働環境がブラック企業レベルだと知り調べてみたら、実際ひどい状況に置かれてる教員が少なく無いみたいだったの…、ねえ、自分達の労働環境をまともな形に出来ない教師に本当の教育が出来ると思う?」
「ふふ、本当の教育なんて…、私達、義兄弟姉妹にとってプラスになった教師は少ないと言う結論に達していますよね。」
「でしょ、子ども達が接する数少ない大人で有る教師の力量が問われるのだけど、教師を志す切っ掛けがテレビドラマだったりしてね、教員の労働実態を知らずに美化された側面だけを見て…、まあ、教師になって愕然としたと言う人は少なからずいるわけ。
 今の教育環境を把握してる人達は安易に教職を選ばないと思うわ、私も教員という立場では無く教育改革を考えて教職課程を取り、高校生バトルに興味を持ったの。」
「それなら、学生社員からカンパニーの正規社員にという流れは不本意では無かったのですね。」
「不本意どころか、教育改革を考えてる人が、それを実現させる一番の道と考えてのことよ、勿論一郎さんとのことも有ったけど。」
「そんな友香さんは社会組織論(仮)のこと、どう考えているのですか?」
「そうね、元々社会科の範囲って広いでしょ、その中から何を小学校で教え中学で何を学ぶのか、限られた時間を考えると難しい選択と言えるのだけど、私は社会科と言う教科自体を一旦潰して再構築するべきだと考えてるの、勿論今の制度下では難しくて、学校は動かないし動けないだろうけど、私達なら、その道筋ぐらいは示せると思うのよ。
 教科の明確な目的を、より良い社会人として責任の持てる大人へ成長させる、としてね。」
「再構築のイメージは?」
「そうね、春子さんは生まれてから成長して行く過程を追いながら、個人と社会との係わりを考えて行くのでしょ、分かり易くてとても良い取り組みだと思うけど、その逆から考えて行くのも面白いと思っていてね。
 まず我々が好ましいと考える社会人像を描いてから、そこに至る道筋を検討するってどう?」
「こんな大人に育てたい、から始めるのですね。」
「こんな人と共に働きたいとか、そう考えた時に自分はどうなのかと振り返ったりもしてね。
 勿論価値観は人それぞれだから簡単ではないのけど、人を騙してでも大金を手に入れたいと言う価値観は否定されるべき、相手の立場を考え思いやりの気持ちで行動することは推奨されるべきだから、凄く難しいという訳ではないと思うの。
 そう言った事を宗教的倫理観ではなく、社会を研究し、より良い社会集団を形成する事を目指して構築出来たらと思うのよ。」
「科学的な判断に基づく理想的な人間社会の構築と言う事ですね。」
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