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山影静-03 [F組三国志-02]

 東山公園では他のグループと個別に合流してということに。
 少々面倒な気がする。
 一箇所目はサイ。
 赤澤さんの言葉に甘えて、とりあえずスケッチを始める。
 ふむ。
 普段描くことの無いサイはモデルとして結構面白い。
 形が出来てくると、何となく周りが騒々しくなって来た。
 人に見られながら描くというのは気恥ずかしいものだが、少し新鮮さを感じる。
 程よくサイが描きあがった頃、一グループ目との交流時間が終わったみたいだ。
 絵の方は自宅に帰って仕上げるか、そのままにするか…。

「山影さん、描くの早いね、びっくりしたよ。」
「集中してると、簡単なスケッチに時間は掛からないのです。」
「そうなんだ…。」

 なにやら、星なんとかという男子が色々話し掛けて来るが…、後は、面倒になって聞き流すことに。
 時々頷くふりをしていれば良いだろう…。
 あっ、赤澤さん。
 声を掛けられたが、とっさに返事が出来ず、頷いて済ませてしまった。
 少し緊張する。
 適当にあしらって済む人じゃない、というより済ませたくない。
 彼は授業中先生に問い掛けられると他の生徒とは明らかに違う視点で発言、その話は先生の話より興味深く楽しい。
 赤澤さんに対する気持ちは恋愛感情と言うより、尊敬という感覚。
 秋山さんとはお似合いで、二人を見ていると何故か心が癒される。
 私には彼氏なんて出来ないだろうが、二人みたいなカップルには憧れが有る。
 
「ねえ山影さん、山影さんの絵をさ、クラスのプリント、ほら遠足に関する連絡とかの印刷物配ったでしょ。
 あんなのに使わせて貰えたらと思うのだけどどうかな?」
「別に…。」
「良いんだね。
 あと、遠足の企画を振り返り、まとめたものを文化祭を意識して作成する予定が有ってさ。」
「テキストデータで文を下されば、イラストを入れて、レイアウトも組んで仕上げます。」
「ほんと、そりゃ助かるし楽しみだ。」

 どうして、こんなことを口にしてしまったのだろうと、すぐに後悔。
 母の目を盗まないと…、日頃とは違うスケッチ、遠足で浮かれているのだろうか。
 でも、やってみたいのは本心。

「DTP作業は好きなのです。」
「そうなんだ、じゃあDTPのソフトなんかも持ってるの。」
「はい。」
「なに? そのDTPって?」
「岡崎、DeskTop Publishingだよ。」
「えっ?」
「直樹くん、お兄さんはこちらのお姉さんと大切なお話しがあるからね、向こうのペンギンさんのとこへ先に行っててくれないかな。」
「は~い、って、ぼくはガキか?」
「ふふ。」
「え~っと、ソフトは?」
「PageMaker。」
「それならうちにもある、バージョンが違うかもしれないけど。」
「父の会社でなら、カラー出力も出来ます。」
「それは心強い、文化祭を視野に入れているからね。
 うちも親父関係で色々出来るから、また相談しよう。」
「はい。
 あっ、写真はどうしますか?」
「う~ん、極力、絵にした方が面白いと思うけど、写真を使うにしてもちょっと加工して個性的な感じにしたらどうだろう?」
「ふふ、良いですね。」

 あれっ、なんかわくわくしてる、私…。
 でも、良いのか…、問題は親だ。

「そう言えば、お母さんが絵を描いたりすることに否定的って言ってたよね、そっちは大丈夫?」
「だめかも…。」
「それは、なんとかならないかな。」
「数学の小テストで思う様に点が取れてないので…。」
「はは、みんな数学で苦しんでいるのか。」
「赤澤さんは数学得意だからうらやましいです。」
「小テストで点が取れたら、余裕が出来そうなの?」
「はい、小テストをクリア出来れば、定期テストもそれなりにと思っています。」
「ねえ、哲平と秋山さんとで数学の勉強会をやる予定が有るのだけどさ。」
「ふふ、照れないで、美咲とかで構いませんよ。」
「へへ、まあ、良かったら参加しない?」
「えっ、良いのですか?」
「嫌じゃなかったらだけど。」
「嫌な訳ありません。」

 秋山さんの前に哲平って…。
 哲平さんは私にないものを色々持っている、かっこいいし憧れている。
 遠い存在ではあるが、彼と一緒で嫌な訳がない。

「哲平のことは、あまり知らないかも知れないけど良い奴だよ。
 意外と真面目だしね。」
「はい、それで、何時ですか?」
「おっ、乗り気になってくれた?
 一回目は次の日曜日、基本、哲平の都合に合わせることになってるから二回目以降は未定だけどね。」
「ほんとに私も良いのですか。」
「うん、大丈夫、二人には俺から話しておくから。
 場所は俺んち、ほら地下鉄でここに来る途中、覚王山ってあっただろ、あそこから歩いて十分ってとこなんだ。
 で、少しお願いが有るのだけど。」
「はい。」
「当日はね、まず数学、それから今回の遠足のまとめ、ここまでは時間を区切ってやりたいんだ。
 だらだらとやるのではなくね。」
「はい。」
「で、終わったら、ちょっとおしゃべりしたりとかさ。
 俺も、まだ哲平や、み、美咲のこととかも、よく知ってる訳じゃないからね。」
「そうなのですか。」
「そうなんです~。
 で、もう一つ個人的なお願いがあって。」
「はい。」
「み、美咲を家へ呼ぶの初めてなんだ。
 で、ちょっとドキドキでさ。」
「ふふ、赤澤さんも普通の人みたい。」
「え~、俺、普通だよ~。」
「大丈夫です、ちゃんと協力しますよ。」
「よろしくね。
 あ、そろそろペンギンの前で集合する時間だ。」

 赤澤さんも普通の人なんだ~、ふふ、ちょっぴりかわいいかも。
 あれっ、そう言えば…、男の子と気軽に話してた…、私。
 始めは緊張してたのに。
 赤澤さんは不思議な人だ。
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