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地方支部-06 [シトワイヤン-10]

「祭りというイベントを共にすることで、地元の仲間意識を高めたのですね。
若者とお年寄りを繋げたのは、本間さんのスキルということでしょうか。」
「まあ、お祭りに寄付し飲み会では奢るとか、金の力も働いているがね。
で、君達がテレビに出始めてからは、党支部の話が出て党員が更に増えたのだが、この頃から、どうも市長に問題が有るという情報がね。
これは党のサイトで党員達が情報交換して判明したことなんだ。」
「党のシステムが役に立ったのですか?」
「ああ、党員の一人が目撃した市長のグレーな行為を、些細な事だがとネット上で報告したら、市長の好ましくない話が続々と出て来たのだよ。」
「そんな人が選挙で当選してしまうのですね。」
「与党がバックにいて、大した対立候補がいなければ当選して当たり前、裏の顔なんて一般有権者には分からないからな。」
「選挙の実態と言うか、怖さでも有りますね、立候補者は当然有権者受けする事しか話しませんし。」
「まあ、我々はこれを党支部の団結を固め党員拡大につなげる好機と捉えた訳だ、明確な対立軸の存在が党員の動きを加速してくれたのさ。
そして、自分の実績を知ってる人達が私を支部長から市長へと推して下さっている、市長になると気安く奢れないぞとは言って有るのだがね。」
「党として候補者を立てる初の市長選挙、油断は禁物ですが、今日の集会で当確の文字がすでに見えていると感じました、でも、対立候補は出て来ますか?」
「まともな人なら、市民政党若葉の党員数を調べ、供託金百万を無駄にする確率の高さに気付くだろうな。」
ここまで黙って話を聞いていた清香が。
「市長となられたら、どんな市政を考えておられますか?」
「そうだな、基本的な事は今まで同様に進めて行かなくてはならないが、改革出来る所は改革して行く、その上で、こんな自然環境に恵まれた環境で暮らしたいという人の誘い込みだな。
満員電車で通勤するオフィスを、そのまま、この地に再現出来ないか考えているよ。」
「難しそうですが、出来なくはないのですね、本間さんが社長室をこの地に移された様に。」
「分かってるね、まさにそういうことなんだよ、田舎のオフィスで働くというライフスタイルを提言して行こうと考えているんだ。」
「人は都会から田舎に向かうでしょうか?」
「私のスタッフ達は渋滞と満員電車から解放されて、苗川から転勤したくないと話しているんだ。
それで社内にプロジェクトチームを作って、田舎でも仕事に支障がなく満員電車から解放されたい人の募集を始めた所、すでに十名程度の希望者がいて調整しているよ。」
「企業が動けば過疎化に歯止めが掛かるのでしょうか?」
「過疎地では労働力を確保出来ないと考えてるだろうから、そこまでは難しいだろう。
だが、敢えて工場や倉庫ではなくオフィスを移転し本社機能の一部を苗川に置くことで大都会から離れられない人達に考えて貰おうと思ってるのさ。」
「オフィスを過疎地へとは考えてもみませんでしたが、単独より幾つかの企業が共同で取り組めば効率が良くなりそうです、市民政党でも紹介して頂けると嬉しいです。」
「そうだな…、まずは示せる実績を上げてからと考えていたのだが…、清香さんの言う通りだ、概要をまとめて公表させれば、市民政党に関係してる企業の人達が考えてくれそうだな。」
「では知り合いの社長さん達とも相談してみます。」
「清香、都会の本社が自然災害などで機能停止した場合、バックアップを必要とする企業はないのかな?」
「そうですね…。」

暫くは、田舎にオフィスを置くメリット、デメリットについて話し合った。
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