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地方支部-05 [シトワイヤン-10]

党員集会終了後は本間さんのお宅にお邪魔した。
愛華は広い庭と大きな家を目にして…。

「立派なお宅ですね、本間さんは苗川市の出身ではないと聞きいていましたが。」
「ああ、東京育ちなのだが、ここが気に入って数年前に越して来たのだよ。」
「本社は東京、ご不便は有りませんか?」
「社長が東京に住む必要はないんだよ、ここの社長室で問題ない。
なあ、東京は品行方正な中年が住みたい所だと思うか?」
「う~ん、お仕事の為に仕方なくという人ばかりなのか、品行方正ではない方が多いのか考えてしまいます。」
「愛華さん、田舎暮らしは、どう?」
「一人では無理です、でも、大学と仕事が無くて和馬と一緒だったら苗川市みたいな所に住んでみたいです、和馬はここの夏を気に入っていますので。」
「和馬くんは、それで土地の話を?」
「はい、でも、夏休みにお話しさせて頂いてからこんなにも早く、しかも整地済みで…、本当は整地だけでもかなりお金が掛かっているのではないですか?」
「はは、君が使ってくれたら何倍にもなって返って来そうだと思ったんだ、今日、テレビ番組の話を聞かせて貰ってそれを確信したよ。
実は、ぼんやりと、あのエリア一体を多目的公園に出来ないかと考え、前から調査はしていたんだ、持て余している土地を安く引き取る話はすでに有ったのさ。」
「調査は党員の方が?」
「ああ。」
「苗川市の党員は一気に増えましたね、有権者に於ける党員の割合は全支部中トップです。
本間さんが生まれも育ちも苗川ならまだ分かりますが、どんな流れで支部長になられたのですか?」
「そこには色々な思いが有ってね。
引っ越して来る段階で死ぬまでここで暮らそうと考えたんだ、だから家は設計段階から老後を意識して建てた。
死ぬまで暮らすのなら、地元の方と親しくなっておきたいだろ、だから地元の行事には積極的に参加させて貰ってたんだ。
そんな場での話しから、この苗川市の問題点が見えて来て、会社再生をして来た私の経験が地方都市再生に活かせるのでは思い始めたのさ。
そんな時に市民政党若葉が登場したんだよ。
学生が発起人で有りながら、大学関係者を中心に大人達が新しい政党を作る。
バランスの取れた形で徐々に党員を増やしているのを確認して、取り敢えず周りの知り合いに教えたら、すぐに党員が百人を越えたのさ。」
「それだけの人脈をお持ちだったのですね。」
「まあ、若者が地域行事の主役に成れる様な改革を後押ししていてね。
祭りが衰退して行く、とお年寄りが嘆いておられたから、色々提案したのさ。」
「若者の参加が少なくなっていたのですね、どんな改革をされたのです?」
「飲み屋で知り合った若者達に、町を出て行った若者が帰省して来るタイミングで新しいお祭りをしないかと持ちかけてね、そこに昔ながらのお祭りを取り込んだのさ。
若者が主催者になり、今まで祭りを運営して来た連中はサポート、揉め事は有ったが、この形にした事で運営スタッフが増え、活気有る祭りになったんだ。」

本間さんの力と人柄が分かった気がする、それまで祭りに興味の無かった若者をイベントの中心に置くことで若者にとっても魅力的なイベントに、こういった発想で会社の業績を上げて来られたのだろう。
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