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板垣千景-38 [高校生会議2-08]

「板垣さん、有難う御座いました、これでようやく着工の目途が立ちました。
道路用地の買収は難しくて、今回解決して下さった案件も三件は十年越しだったのですからね。」
「先祖代々の土地とか皆さんそれぞれに思い入れが有りますものね。
今回はテレビ取材を絡めて誤魔化す様な、邪道な交渉でしたが。」
「いえ、板垣さんからお願いされて、意固地な自分が恥ずかしくなったのでは有りませんか。
自分で板垣さんが取材に来ると宣伝して集まった親族の手前も有りますし、ご近所の方にも情報が流れていたのですよね。」
「ええ、市長の訪問に対し取材が入りますのでご迷惑をお掛けするかも知れませんと、事前に話を通して貰いました。」
「近所の方にとっては、早く工事を進めて欲しい案件な訳で、板垣さんの作戦勝ちでしたね。」
「そういう感覚ではなくて…、それより事前準備の段階から少し気になっていたのは、女性職員があまり係わっていない事です、部長はどうお考えですか?」
「土木関係はどうしても男性中心です、また住民との交渉は結構大変、相手から恫喝される事も有りまして女性では荷が重いと考えています。」
「初期段階は男性にお任せするとしても、長引き始めたら色々な手を考えて良かったと思います。
市長が代わって市政が刷新されつつ有るのに前市長に対する批判をしておられた方がみえました。
その方は、今の市政が前市長時代からの単なる延長と捉えられていた様です。
単純に土地に関する交渉だけではなく、市政に対しての理解を深めて頂くといった事をしていればもっと解決が早かったかも知れません。
今回の話し合いで、市の福祉事業がうまく伝わらず充分に活用されていない実態も見えて来ました。
女性職員にバックアップをお願いして市の活動を充分にご理解頂き、市が真面目に仕事をしていると認めて頂く努力をすれば、時間の掛かる交渉でも譲歩を頂き易いと思います。
また、うちのスタッフは、交渉先を事前に訪問して事情を伺わせて頂く中で、始めに担当した職員との意思疎通がうまく行かないままずるずると来てしまった、と感じたそうです。
そこを第三者の目線で改めて説明させて頂き、お話を聞かせて頂いた事で譲歩して下さったと思います。」
「分かりました、今後、交渉の体制を見直します。」
「お願いします、市長室としましても、今回の取り組みを整理した後、職員の皆さんに市民との向き合い方について考えて頂く方向で進めさせて頂きます。」
「そうですか、若い職員中心に意識は随分変わって来ていると感じていますが、私を含めたベテランはまだ行政改革について行けて無いのかも知れません、今一度、組織を見直してみます。」
「お願いします。」
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