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69-支援 [岩崎雄太-07]

武井が村での生活にも慣れ、施設のそこここで彼の試作品が使われる様になる頃には、住人も増えていた。
工房にも新人が増えつつ有る。

「武井さんはすごいですね、竹細工を始められて間が無いとお聞きしましたが、これだけの作品を作れるなんて。」
「いえ、まだまだです、これでは高くは売れません、時給千円で一時間かけて作ってる物が卸値で最低でも五千円を越さなくてはと考えています。」
「えっ、そこまでは…。」
「竹林の手入れに手を貸して貰っています、もちろん筍目当てでも有りますが、工房の中でも自分が取り組んでいる部門は真っ当に商売として成り立たせたいです。
ここは多くの支援を受けて運営されていますが、自立というスタイルを示す事も大切だと思っているのです。」
「ここのシステムについては色々教えて頂きましたが、支援に甘えてしまっていけないという事なのですね。」
「ええ、それだけでなく、支援する側になれないかとも話し合っています。」
「ここは刑務所から出て働く場所の無かった人や、子どもを抱えて貧困生活から抜け出せないでいた人が集っていて…。」
「ここには子ども時代を養護施設で過ごした人もいます。
工房の縫いぐるみチームは試作品を恵まれない子どもの施設に送って、そこでの反響を参考に商品化と考えています。
そんな話の過程で、自分達の力で…、いえ、自分達の力だけでは難しいでしょうが、児童養護施設をこの村で受け入れたいと考えています。
それには、経済的にも自立した大人が…、まだまだ夢の段階ですが、岩崎社長は我々からのメッセージに対して、胸を張って子どもを受け入れる環境を作って下さいとの返事を下さいました。
お金の問題ではなく心の問題として…、子ども達を受け入れる気持ちが本物で有れば、子ども達を豊かな自然の中で育てたいと前向きに、所長からはすでにプロジェクトが動き始めたと聞いています、いえね、お金の問題ではないと言われても、我々が自信を持って子ども達を迎え入れるにはそれだけの覚悟を形を示す必要が有ると感じているのですよ。」
「あっ、人としての再生を大切にしたいと所長が話してみえたのはそんな話が進んでいたからなのですね。」
「ええ。」
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