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67-工房 [岩崎雄太-07]

翌日、武井が見せられたのは工芸作品に関する映像。
緻密な作業によって作られる作品だが、根気と慣れが有れば作れなくもないと彼が判断したのは竹細工だ。

「所長、この竹細工に挑戦したいと思います。」
「分かりました、すぐ準備に入りますが、道具や材料が届くまでは、資料とネットで学習をお願い出来ますか。」
「はい。」
「私どもといたしましては竹細工のプロを目指して頂きたいのですが如何でしょう。」
「実際に始めてみないと分りませんが、昨夜皆さんから色々教えて頂いて、そうですね売れる商品を作れたらと思っています。
この村を再建する手助けが出来るのなら…、正直、勧められるままここに来てしまったというのが、ほんとの所だったのですが。
でも、ここでなら自分も、村と一緒に再生出来そうな気になっています。
過去の経歴を隠す必要も有りませんし。」
「その心を忘れずにお願いします、岩崎社長にも喜んで頂けます。」
「所長は、ここへ来られるまでは何をされていたのですか?」
「株式会社岩崎の開拓本部長です、その座を後輩に譲って、ここの開拓に専念すべく家族揃って移住して来ました。」
「では、長野から。」
「はい、岩崎村とか向こうで展開している事業は形が出来て来ましたからね、何にもない様な所で初心に帰るのも面白いと思いまして。」
「そうでしたか…、岩崎家の挑戦を支えているのは所長みたいな人達なんですね。」
「いえいえ、色んな人がいますよ、ここの建物を建てたのだって、元、組関係の方々ですし。」
「えっ。」
「足を洗いたくても先々を考えると簡単ではない、そこを岩崎社長の指示で救い上げたという形です。
今は別の過疎地でここと同じ様な施設の建設に当たっています、岩崎社長の為なら体を張ると言ってましたよ。」
「そうなのですか…、岩崎村を実際に体験されて如何でしたか? こことは随分違ってた様ですが。」
「向こうは一気に資本投下して作った村ですから、失敗する訳ないと思ってましたよ。
株式会社岩崎は順調に売り上げを伸ばしています。
岩崎社長は成功例を一つ見せれば、真似して過疎地の再開発に取り組む企業が増えるだろうと期待しておられたのですが、残念ながらまともに動いたのは僅かでした。
それで、福祉村を作って更なる過疎地の再生を考えた訳です。
岩崎村に初期投資した額より、うんと安く始めるから利益が出るのは遅くなるでしょう、出ないかもしれません、その代わりここと同規模の施設をまず十か所立ち上げる予定です。
後は、岩崎雄太社長率いるグループ企業の業績次第で拡大か維持かになるでしょう。」
「昨夜、他のメンバーから自分達の作業は村の整備が中心で利益に繋がらない、だから工房が頑張って金を稼いで欲しいと言われました。」
「はい、ここのメインに考えています、手間暇かけて高級感有る作品を高価格で売って行く予定です。
武井さんが自信をつけて、独り立ちという事になった時は応援しますが、それまでは時給千円でお願いしますね。」
「高く売れる作品を作って、ここで生活していたら社会貢献に繋がるという事ですか。」
「はい。」
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