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05-訪問 [岩崎雄太-01]

翌日、朝。

「役場へは午後から行くと連絡を入れといたよ、いきなり行くより少しでも準備する時間を上げないとね。」
「こちらの意図は伝えたのか?」
「ああ、集落再生と伝え、雄太の事を話しておいた、これで大した準備が出来ない様なら職員は無能だな。」
「でも、いきなりの訪問には違いないわよ…、まあ今後の活動を考えたら職員の能力は確認できるかもね。」
「だろ、村をどうこうしようという時に役場の動きが鈍い様なら、政治家への働きかけとかが必要になって来る、それは出来れば避けたいよな。」
「昨日ネットで探った所では過疎化対策は考えているみたいです、ただ効果には疑問が感じられました。」
「仕方ないさ、簡単な事なら過疎化は進んでいないだろ、まずはJAへ行って、村の経済面での可能性を考えてみようか。」

この日、午前中はJA、午後は役場への訪問で終わった。
夕食時。

「社長、さすがにJAの対応は良かったですね、そうでなくては今後が不安になりますが。」
「まあ、相手の喜ぶ事をしたからね、明香、新しい口座の管理頼むな。」
「ええ、ここの村関連で動かす資金は一旦この口座へ移しましょうか。」
「そうだな、分かり易くして置いてくれるか、何か有った時、税務署の人も大変だろうから。」
「農産物によって手間に対する利益率がずいぶん違っていたとは考えた事もなかったな。」
「作物によっては、腰にきつい作業も多いのね、農業が敬遠される原因でしょう。」
「金を掛けて機械化すれば楽に出来るとは言え、費用対効果、近代化への投資が出来るかどうか。
これから募集する人達に鍬で畑を耕してみませんかとは言いにくいよな。」
「でも、自分達が食べるぐらいの量ならそんなに大変でもないって言ってなかったかしら?」
「野菜だけでの生活ならな、利益を出すなら商品作物を目指す事になるが大変だぞ、耕作放棄地を元に戻すのも簡単ではなさそうだ。」
「本格的な農業で収益を上げるには、村民の経験値も必要よね、体験観光と言っても魅力的な体験を提供出来るかしら?」
「問題山積みだ、でも、役場は思ってたよりきちんと対応してくれたな。」
「ああ、過疎化対策に大きな一手を打とうとしている訳だから税収にも繋がる、当たり前と言えば当たり前だが、真面目そうな人達だったね。」
「社長、頂いた資料は自分なりに分析してみますけど、このプロジェクトのリーダーは誰になります?」
「そうだな、村長が決まるまでは…、愛華やってくれないか?」
「分かりました、今抱えている作業は調整出来ると思います。」
「立ち位置としては、我が社の社会貢献プログラム準備室、室長と考えてくれれば良い。」
「はい、プロジェクトは別会社を立ち上げるという事でよろしいでしょうか?」
「うん、我が社とは資金の流れが違う、別会社にしないと誤解も受け兼ねないな。」
「会社設立の準備を始めれば良いですか?」
「ああ、頼むよ。」
「では、食事が済んだらメールを何本か送っておきます。」
「任せるが、愛華、はりきってるな。」
「ええ、楽しいじゃないですか、新しい事業を始めるって、社長なら良い結果に導いて下さいますでしょうし。」
「そうか? 万年赤字の企業になりかねないぞ、社員を養って行けるだけの収益が出せるか見通しは立ってないぞ。」
「何とかなりますよ。」
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