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06-大鹿源蔵 [岩崎雄太-01]

三日目は再度隣村へ。

「こんにちは、この集落のまとめ役の方とお聞きして伺ったのですが、岩崎雄太と申します。」
「ああ、昨日役場から電話が有ったよ、大鹿源蔵だ、それにしても随分お若いね、別嬪さんは彼女かい。」
「はい花柳明香です、こっちが風祭祐樹、その彼女の火室愛華、うちの会社の中心メンバーです。」
「こんな田舎には場違いな人達が、本気で隣の集落を幾つか再生させるおつもりかね?」
「ええ、伯父が亡くなって土地を相続しますので。」
「そうか、あそこに住んでいた連中、私の同級生も喜んでいたよ、売れない土地でも固定資産税の請求は続く、金払ってでも引き取って欲しかった土地を買い取って貰ったってな。」
「そうでしたか、父や祖父にもその話をさせて貰います。
まずは人が住める様にと考えているのですが、空き家の痛みが激しくて建て直すしかないと考えています。
その作業をする人が毎日通いでは大変だろうと思いまして、この集落に空き家が有れば貸して頂けないかと。」
「本気なら手伝うが、借りるより、引き取るという形には出来ないか?」
「と、言いますと。」
「空き家を貸してくれなんて言うと、出てった連中に欲が出るからな、戻る気もない連中の所有物がこの地に残るのが正直嫌なのさ。
何、ただなら貰っても良いという人が現れたと連絡してやれば何軒か手に入るぞ。
家賃が掛からなくなる分再生に予算を回せるだろう。」
「それが可能なら助かります。」
「俺達としてもな、人口が減るばかりの村に人が増えれば嬉しいんだ。
ただ、耕作放棄地の再生は大変だぞ。」
「はい、JAの方にも教えて頂きました、しばらくは色々な可能性を考えてみたいと考えています。
それで、新入社員の研修を、ここの空き家を利用して出来ないかとも思っていまして、農業実習等に協力して頂けそうな方がみえましたら紹介して頂きたいのですが。」
「それなら俺に任せろ、少々問題の有る人が来ても対応出来ると思う。」
「大鹿さんの経歴は個人情報なので、役所の方に伺うのを控えたのですが。」
「少し前まで教員をやっていた、定年退職したのは去年の事、ここが好きだから住み続けるつもりだが、過疎化は出口の見えない問題でね、この村最後の一人になる可能性も考えていたんだ。」
「それでしたら私達のプロジェクトに参加して頂けますか、契約内容は明香と相談して下さい。」
「いや、ボランティアで良いよ。」
「責任が、という事でしたら考慮させて頂きますが、プロジェクトで得たお金をプロジェクト参加者へ還元して頂ければ、酒の差し入れとかでも良いですから。」
「あっ、君が会社を軌道に乗せる事に成功した理由が分かった気がするよ、ここは会社としてやっていくのか?」
「ええ、今の会社とはお金の流れが違いますので、新会社を設立します。
今なら会長から平社員まで肩書は自由に選べます、給料のスタートはどの肩書を選んでも変わりませんが。」
「教員生活が長かったから重役の仕事は分からない、教育係でどうかな。」
「では、契約成立後に社員教育のカリキュラム作成を始めて頂けますか。」
「了解しました、ひとまず農業基礎という事でよろしいですか?」
「はい、それはここでの暮らしに馴染むという事を最優先でお願いします。
研修中にやっぱり田舎暮らしは無理だとやめる人を減らしたいのです。
進捗は、火室へメール等で連絡して頂ければ我々で共有しますが…、通信環境は良くないですよね。」
「ええ、それでも何とかしますから。」
「連絡方法も火室と相談して下さい、別荘が完成する頃までには光ケーブルが敷設されるでしょうが、すぐにとは行きませんので。」
「そこまで初期投資をされるのですか?」
「私の別荘をこちらに建てるという情報は業者に流して有ります、頑張らないと大きな契約が解除される可能性も有る、と考えるでしょうから、こちらの出費は大した事無いのですよ。
我が社はともかく父の会社は大きいですから。」
「は…、はい。」
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