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89-民主主義 [キング-09]

和の国新島から和の国希望島と名前を変えたエリアは順調に人口を増やしている。
十人から二十人程度の居住コローで暮らして来た彼等にとって、ここは言葉の壁こそ有るが広い空間においしい食べ物、この世界を楽園と感じている様だ。

「新しい仲間達は、先の見えない月日を重ねた後だから、ここでの生活は嬉しさひとしおでしょうね。」
「そうだな、そして、それを城の子達に導かれたと感じてるみたいだ。」
「ああ、作法はそれぞれ違うが城の子達に対する敬い方は半端じゃないぞ。」
「国の方も尊の提案で、尊と巴を記憶が蘇る場に同席させたらすごく穏やかに事が運んだ、今後の予定を早めても良いのではないか。」
「問題ないだろう、なあ、今回の件で世界中の人達をもう一度観察させて貰ったが、民主主義って何だったと思う?」
「民主主義か…。」
「この世界に選挙はない、キングを中心に各国のリーダーグループが行政面を担当している、でも不満もなく平和な社会だ。
過去の民主主義は能力の良く分からない連中の中から、政治の事も良く分かっていない人による人気投票みたいな選挙で代表を選んだ結果、私利私欲に走る連中の不正が有ったり…、もっともここじゃ金が無いから不正蓄財は出来ないがな。」
「かつての世界でも民主主義、人の平等を唱えながら、王を敬ったりもしてただろ、人間の集団には心の支えとなる王様だったり大統領だったりが必要じゃないのか。」
「ヒーローを求めていた気もするわね。」
「自分達の集団をより良い方向へ導くと人々に思わせる事が出来たら、例え独裁者で有ったとしてもヒーローだろうな。」
「キングは、この世界で唯一マリアさまと会話できる大人、彼を中心にこの豊かで平和な世界が成立している、誰も民主主義を望んでいないと思わないか、利害関係も少ないしな。」
「新たに加わった人ですら、この世界の一員となるべく、キングに忠誠を誓うという意思を覚えたての共通語でたどたどしく伝えようとしていたな。」
「この世界でキングは象徴的な存在でも有るのよね。」
「私達の世代はそれで問題なく進んで行くと思う、だが、子ども達の世代はどうだろう?」
「そうね、彼等はキングより、マリアさまの立場になっていく気がするわ。」
「それは私も感じている、でも子ども達は…、はは、まだ先の事だよな、子ども達がどんな社会体制を選択するか楽しみじゃないか、それまではキングを中心とした今の社会体制を守って行けば良いだろう。」

金の存在しない豊かな世界。
貧富の差を生み出す要因はここにはない。
綺麗な石っころを有難がる人もいないし、そもそも宝石の類は見つかっていない。
この社会が拡大したら、今のシステムでは無理が出て来るのだろうか、子ども達が成長してどう判断して行くのか楽しみでは有る。
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