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幼い頃-08 [安藤優-01]

優は父との外出を好んだが仕事となると一緒にとはいかない、そんな時はついて行きたいと泣いたものだった。
これに対して優が五歳になる頃から、父親は条件を出し始める。
きちんと挨拶が出来る様になったら、に始まり、父が相手の人と話してる時に静かにしていられるか、きちんとした言葉遣いが出来る様になったら、と少しずつハードルを上げながら、子どもを連れていっても問題の少ない所から、連れ出す様になった。
尤も先方は、優に会いたいという人も多く、彼は父との時間を楽しむ事となる。
遊び以外で父に同行したのは、まず大学だ。
父の会社は色々な大学と強い繋がりを持っている。
どこへ行っても学生達に取り囲まれるが、優は物怖じしないだけでなく、よく質問をする、これは大学への同行に対しての条件だったが、条件がなくても人に色々訊く事は好きだった。
「お兄さんはどんな勉強をしているのですか?」
多少の緊張感は有るが…。
「え~っとね機械…、機械を作ってるんだよ。」
「へ~、どんな機械?」
ここで、学生は言葉に詰まる、五歳児に最新ジェットエンジンの部品と言って分かるのだろうかと迷っている様だ。
他の学生が助け舟を出す。
「飛行機のエンジンだよ。」
「エンジンってなあに?」
「自動車や飛行機を動かすものさ。」
「へ~、どうやって動いているのかな。」
「え~っとね…。」
ここで父が話始める。
「君達有難うね、五歳の子に説明するのって難しいでしょう。」
「はい、ちょっと目の前が暗くなりました。」
「まあ時には基本に立ち返って子どもに説明してみるのも面白いものだよ、意外な盲点に気付かせてくれる事も有るからね。」
「はい。」
「優、帰ったらエンジンについて調べてみるか?」
「うん。」
この出来事は、その大学の学生達の間に広まり、多くの学生が自分の専門を優に説明できるだろうかと考えたそうだ。
父親は、これを狙って優を連れて行ったという憶測も生まれたが、実際の所は定かでない。
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