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幼い頃-09 [安藤優-01]

工場見学は大好きだった。
父の会社の傘下には大小様々な工場が有る。
父の工場視察は、工場紹介のビデオ撮影を兼ねる事がほとんどだったが、そこに小さな専用ヘルメットをを被り、熱心に説明を聞く優の姿もよく登場した。
「そうか、このセンサーの前を通るとここが下がるんだね。」
幾つもの装置を見学する内に仕組みにも敏感になる。
説明する側も面白くなって詳しく説明する様になっていった。
そんな見学中の出来事。
「ねえ、お父さん、この機械って前に見た機械と同じ様に動くけど、何かゆっくりだよね。」
「前に見た機械か…、ああ、そうだな…、伊藤さん、中田社長に連絡してこの装置と、SSKの工場にこれと似た装置が有るから、作業効率や安定性を比べて改善点がないか調べて欲しいと伝えて頂けますか。」
「分かりました、SSKの方は工場長に確認をとればよろしいですか?」
「はい、そうして下さい。」
「お父さんどうしたの?」
「優の言う通り二つの機械は同じ様な仕事をしてるんだよ、この機械も、この前見た機械の真似をすれば、もっと早く動いてくれるかもしれないから中田のおじちゃんに見て貰う事にしたんだ、優、気付いてくれて有難うな。」
「安藤社長、ずいぶん違うんですか?」
「ええ、たぶん早くなって安定度も上がると思います、この装置が流れを遅くしてるから、改善すれば作業効率が上がると踏んで指示を出させて頂きました、中田工業から連絡が入ると思いますのでお願いします。」
「はい、分かりました、それにしても優くんは、すごいですね。」
「偶然SSKの方で色々教えて頂いてたからです。」
「偶然と言っても…。」
結局この装置は改善され作業効率を大きく上げる事となるのだが、安藤社長が自ら現場に指示を出す事はこの頃では極めて異例な事、しかもそのきっかけを子どもが作ったと有って、社員達は気を引き締め直した、優が指摘している姿も映像付きで紹介されたからだ。
会社の基本姿勢に、グループ内企業同士の情報共有による効率化という事が有る、本当に共有されていたら優からの指摘はなかったと皆は考える。
意図的に優を利用しているのかどうかは定かでないが、父が彼を見学に連れて行ったことは結果としてプラスになった訳だ。
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