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F組三国志 12-1 [F組三国志 12 舘内亜美]

黒川くんがチェロやってたなんてびっくりした。
びっくりしすぎて、あ~ん、みんなにバレバレだったかな~。
どうしよう。
でも、黒川くんやさしいからなぁ~、気配りしてくれるし。
ふふ、球技大会のことや演奏のことで話すこと多くなりそう。
ピアノやってて良かった。
でもチェロとじゃ、簡単に演奏できないか…。
みんなの前で演奏する前に一回ぐらいは二人で合わせておけないかなぁ~。

「ねえ、亜美。」
「うん、な、何?」
「外、誰かいない?」
「そうね。」

あっ、戸が開く。

「みなさん、おじゃましてもいいですか~。」
「おじゃましま~す。」

あれ? 確か早川さん、チーム赤澤の…。
えっ? 教育実習で来ていた小山先生?
他の人たちは…。

「あ~、早川さん遊びにきてくれたのね。」
「はは、表向きは調査とか研究だけどね、ちゃんと学校側の許可も得てあるから、はい、テストの打ち上げへ差し入れよ~。」
「おお~!」
「テスト前の調査では、みんなも余裕無かったろうから色々聞けなかったけど…、もう今日のホームルームの時間も過ぎたでしょ。」
「確かに、もう帰ってもいい時間だな。」
「え~、私が来たのに帰るの?」
「い、いえ、か、帰りません。」
「ははは。」

「じゃあ、みんなに紹介しなきゃいけないな。
え~っと、遊びに来てくれたのは、チーム赤澤のメンバーでね、まずはさっき話題になったプロジェクトFのチーフ矢野さん。」
「矢野です、もう一度高校一年生を経験するつもりで、みなさんのことを教えていただけたらと思っています。
よろしくお願いします。」
「早川さんからは自己紹介でいいかな?」
「はい、リーダー。
プロジェクトF、サブチーフの早川です。
もう顔見知りの人も少なくないですよね。
我らがリーダー、赤澤省吾の足跡を記すなんてことの担当です。」
「えっと…、小山です、ってみんな知ってるよな。」
「はは、小山先生もチーム赤澤に参加してたのですか?」
「ああ、入れてもらったって感じかな、赤澤くんの取り組みにはすごく興味があるからね。
教育実習との兼ね合いで問題があるかと思ったんだけど、きちんと学校側の許可をもらえたからね。」
「大学生にとって、チーム赤澤ってどうなんです?
リーダーが高校生で…。」
「はは、リーダーから学んだことは多いから、年齢は関係ないかも…。」
「よね、私も省吾さんの視点にドキってさせられること多いから。」
「俺は省吾さまから学べって言われている、こいつにね。」
「はは、高山です。
経営学を専攻していて…、リーダー、プロジェクトのことは?」
「もう発表済みだよ。」
「ならば…、プロジェクト梶田のチーフなんで、みんなよろしく。
とかくリーダーって言うと年長者のイメージがあるけど、若くても優秀ならちょっと面白いと思って、俺はチーム作りから参加しているんだ。
企業の経営者だって、若い人がなることもあるからね。」
「私は高島みどり、教育学を専攻していてリーダーのお父さまのお世話にもなっています。
プロジェクトFのメンバーなので、よろしくね。」
「俺は…。」

十人も来てくれたのね、高校側の了解も得てるってことは、ほんとに真面目な取り組みなんだ~。

「じゃあここからは、差し入れをいただきながらとしましょうか。」
「あっ、ちょっと待って。」
「矢野さん?」
「美咲ちゃん、ビッグニュースがあるんだ。」
「えっ、なに?」
「さっき俺たちは職員室へ挨拶に行ったんだけどね、先生方がF組のことで盛り上がっていてさ。」
「昨日までに終わったテストでF組はぶっちぎりなんだって。」
「現代社会や英語の先生は早々と採点を済ませたそうなの。」
「現社では他のクラスの平均が六十~七十に対してF組は九十点を越してるって。」
「英語は他のクラス平均五十~六十に対してF組はあと少しで九十点ってとこなんだって。」
「やった~!」
「他の先生方も気になってF組から採点してるそうなんだけど、百点を含め高得点続出、もちろん不正の形跡は見受けられないって。」
「当たり前だよ~。」
「不正行為があると不自然な回答になって結構わかるそうなの。」
「うわ~、ということはテスト団体戦、またも僅差ってことか?」
「ふふ、私は団体戦のことより他のクラスに勝てたことが嬉しいわ、ね、美咲さま。」
「うん。」

「さ~、ジュースも用意したから、紙コップ回して。」
「みんな輪を広げて、チーム赤澤の人たちにも入ってもらって…、でも椅子がないわね…。」
「はは立食形式にしようぜ。」
「座ってられない気分。」
「よし、椅子と机の配置を変えるか。」
「おう。」

「みんなジュース持って。」
「おう、哲平。」
「F組の勝利を祝して、かんぱ~い。」
「かんぱ~い。」

はは、みんなも嬉しそうだ。
がんばったもんな。
えっと…、うふ、黒川くんめっけ。
小山先生たちと話してるのか。

「あっ、黒川くん、実習の時はありがとうね。」
「へへ、大したことしてませんよ、小山先生。」
「ねえ小山さん、F組の鶴翼の陣ってどうだったの?」
「はい、早川さん…。
あれはね~、前に立った時のプレッシャー強かったな~。
黒川くんたちの、授業に真剣に取り組もうって目で囲まれるんだよ。
他のクラスを無難にこなしてきた自信があっさり崩れ去った。」
「先生に対する攻撃的布陣って、省吾さん言ってたけど。」
「うん、あのプレッシャーに応えるだけの力量が自分にあったら、すごく良い授業ができる場だったと思う。
生徒の自発性に基づくものだからね。
残念ながら、自分にはまだそれだけの力量がなかった。
黒川くんたちに助けられてなんとか終わらせることができたけど…。
一回目は特にひどかったんだ、指導の大久保先生から何も言われなくて、ほっとしたって程度さ。」
「はは、そりゃあ大久保先生もF組に関しては…、早川さん、俺たちの数学教師は実質的には省吾なんです。
省吾が動いて、テスト範囲まで小山先生に一気に済ませてもらったから、後は自習中心になって。
大久保先生の授業、最近受けてないな。」
「へ~、自習ってどんな感じだったの?」
「わいわいがやがや。」
「ふふ、そんなに真面目でもなかったんだ。」
「とんでもない、わいわいがやがやと、みんなで数学に取り組んでいたって感じ。
黙々と問題に取り組んでいて、わかんないことがあると、教師役の人に聞いたり、この問題はテストに出そうだって思った人はみんなに解いてみてって提案したり。
難しい問題は省吾の説明をみんなで聞いたり。
とにかく省吾の説明は先生よりわかり易いからね。」
「確かにそうだ、赤澤くんのプリントは、クラスのレベルに合っているって感じた。」
「そっか、じゃあそのプリント、見せてもらおうかな。」
「そう言えば、早川さんたち、今日は調査じゃないんですか?」
「ふふ、してるわよ、みんなでね、ほら、あちこちで会話がはずんでるでしょ。」
「ええ。」
「いかにも調査します、って感じじゃ、よそ行きの答えしか返ってこないって、省吾さんに言われてね。」
「う~ん…、そんな話しを聞くと、ほんとに省吾がリーダーなんだって思えるな。」
「ふふ、チーム赤澤って省吾さんのお父さまのチームって思っている人も結構いるみたいだけどね。」

そうか、省吾さまって美咲さまと話してる時なんか、普通の高校生なのにね~。
ラブラブだし。
あ~、私も黒川くんと…。

「淳一、球技大会の打ち合わせしよ、加藤さんも連れてきたし、ああ、舘内さんここにいたんだ。」
「おっけい、じゃあ小山先生も早川さんもゆっくりしていって下さいね。」
「うん、ありがとう。」
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