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夢プロジェクト-1 [権じいの村-11]

「…、ということで山里市の市長選は高柳裕也氏の圧勝という結果になりました。
今日は、その高柳裕也さんと高柳さんの所属する政治団体宇宙の代表白川慶次さんに来ていただいています。
高柳さんおめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「それにしても圧勝ということだけでなく投票率も高かったですね。」
「はい、皆さんのご支持に感謝しています。」
「やはり震災復興ボランテアセンターのリーダーをされたことが大きかったのですか?」
「はい、支援活動を通して多くの方々と接してきましたから…、それと…、ある雑誌社が協力してくれたことも大きいです。」
「雑誌社ですか?」
「はい、私達の活動母体は権じいの村プロジェクトという大学の研究室の集合体で、こちらの白川慶次をリーダーとして動いています。
しばらく前、そこの雑誌に白川を中心とする我々の活動を誹謗中傷する記事が掲載されまして、まあ無いこと無いこと書かれたのです。
それに対して、白川を知る者たちが怒りの声を上げまして、雑誌の記事がでたらめだということを、私に一票入れることで証明しようという運動を展開してくれたのです。
その結果がこの数字です。」
「そうでしたか、普通、圧勝となる選挙は投票率が落ちるものですから不思議に思っていたのです。」
「はは、実はその雑誌社に対して抗議をしまして、でも謝罪文を載せてもらっても大して嬉しく有りませんから、我々のプロジェクトのことを連載してもらうことになりました。
法学部の先生が交渉にいったら、何故か、あっさりと決まりまして。
ライターは我々の仲間で、白川との共著のような形にしたいと思っています。
もちろん、原稿料はいただきますから…、まあ仲間に仕事が一つ出来たということです。」
「はは、転んでもただでは起きないってことですね。
でも、いい加減な記事を掲載する雑誌に載せてもいいのですか?」
「ええ、色々な人たちに知って欲しいですから。」

「そうですか…、それでは話しを変えまして、今後の市政についてはどのようにお考えなのか、お聞かせ願えますか?」
「はい、今、色々な大学の色々な研究室がこの市についての調査を進めてくれています。
震災からの復興計画、市の財政の見直しをしてくれている研究室もあります。
この市では大学の実験的な取り組みを、すでに幾つか実践しています。
これは現市長、大山堅信氏が我々の取り組みを快く受け入れ、後押しして下さった結果です。
この地をもっと活力のあるものにしていく取り組みを大学関係者たちと連絡を取り合って実行していきます。
この市の周辺部、特に山間の地では過疎化が進んでいます。
そこには都市部からの移住者をどんどん受け入れていきたいと思っています。
権じいの村プロジェクトが始まった頃は景気もそれほど悪くなかったのが、ここの所のひどい不況で、失業者が農林水産業にも目を向けるようになりました。
我々のスローガンは、手を差し伸べる、ですから、その支援も、ボランティアセンターと連絡を取り合って進めていきます。
土地はありますから住むところだけを何とか確保して、生活の支援をしていく予定です。
手入れされなくなった果樹園、耕されることの無くなった畑、農業を考えれば色々な仕事があります。
農業未体験の人には大学の農学部が協力してくれます。
また、自分達の食べる分も自分達で作れば良いのですから食費はあまりかかりません。」
「そうすると、一人で色々な種類の野菜を作ることになる訳ですか?」
「いいえ、玉ねぎばかり作る人がいたり、大根の畑担当とかになりますが、収穫した作物は共同の物と考えてもらいます。
レタスの産地といった形でレタスばかり作ることはしません。
色々な種類の作物を生産することで、豊作、不作で価格変動するリスクを抑えます。」
「すでに色々な計画が有るというか、当選前から計画が立てられ進められていたのですね。」
「はい、大学関係者の手によって色々な提案が出され、それを地元の市民団体の方に伝えたり、調整したりという役目が、震災前の私の仕事でした。」
「そんな話しを聞いていると当選して当たり前って感じですね。」
「ははは。」
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