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入れ歯 [短編集-2]

「あれっ、兄ちゃん、こんなとこに入れ歯?」
「ほんとだ入れ歯が落ちてる。」
「誰かの落し物かな?」
「いらなくなったんだろ、キック~。」
「はは、変な転がり方だね、ぼくも、キック~!」
「サッカーボールより面白いな、孝也、パスいくぞ。」
「うん、あれ…、少し大きくなったような。」
「はは、気のせいだよ、ほらパス返せよ。」
「じゃあ、キック~。」
「おっと、どっちへ転がるんだ~、ははは…、ほんとだ少し大きくなった気がするな。」
「でしょ、蹴れば蹴る程大きくなったりして。」
「よ~し試してみよう、小さくパスを繰り返して公園の入り口がゴールだぞ。」
「兄ちゃん大丈夫かな。」
「孝也、何心配してんだ、パスいくぞ。」
「うん、おっと、返すよ、あっ兄ちゃんごめん、それちゃった。」
「大丈夫だ、それっ!」

「もうすぐ公園の入り口だね。」
「よし、シュートは孝也が決めろよ。」
「おっけ~」

「ナイスシュート!」
「あれ? 兄ちゃん入れ歯、どこいったのかな?」

「あっ! すごく大きくなってる!」
「ほんとだ!」
「わ~、食べられちゃう~!」
「あ~!」

-------------------

「わ~!」
「正也、孝也、どうしたんだい、二人揃って昼寝してたかと思ったらいきなり叫び出したりして。」
「あ~ん、母ちゃん怖かったよ~。」
「孝也、何泣いてるの、怖い夢でも見たのかい。」

がらがらがら

「ただいま。」
「ほら、父ちゃんもパチンコに負けて帰ってきたらスイカでも食べるかい。」
「おいおい、今日は負けてないぞ。」
「じゃあ、夕飯はご馳走にしなきゃね。」
「いや、勝ってもいない、まあ引き分けってとこだな。」
「おやおや…。」

「ねえ、父ちゃん、入れ歯がね。」
「入れ歯? どうした?正也。」
「孝也とね入れ歯を蹴って遊んでいたらさ、その入れ歯が、急に大きくなってぼくらを食べちゃったんだ。」
「食べちゃったって…、夢か?」
「う~ん。」

「入れ歯って言えばさ…、正也は婆ちゃんのこと覚えているかい?」
「うん母ちゃん、よく、おやつを貰った。」
「そう言えば、亡くなる前に婆ちゃんの入れ歯がなくなってみんなで探したな。」
「あの時は大変だったわね、婆ちゃんも少しボケてて…。」
「母ちゃん、入れ歯は見つかったの?」
「結局見つからなかったの。」
「まぁ、その頃はもう入れ歯も必要ない状態だったけどな。」
「ふ~ん。」
「そう言えば最近墓参りに行ってないな。」
「そうね…、ふふ、婆ちゃんが正也たちに会いたがってイタズラしたのかもね。」
「そうだな、明日にでも墓参りに行こうか。」

-------------------

「えっと~、お墓はこっちだぞ、孝也。」
「う、うん。」
「正也、孝也、そんなに急がなくても…。」
「あっ!」
「どうした、正也。」
「お墓に入れ歯が…。」







自分のペースで外国語を学ぶなら

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コメント 2

パトラ

あ~っ!ネタ元ウチですか・・・(笑)


昨年、祖母が亡くなった時とか思い出して
こ、こわい・・・(^^ゞ
by パトラ (2008-08-14 13:31) 

おにい

はい、ちょっと違う話を書いてみようかと思いまして…。
by おにい (2008-08-14 14:25) 

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