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梶田梨乃-03 [F組三国志-04]

「では改めてお願いします。」
「はい、矢野さん。」
「で、こちらが、須田沙里名さんと高山剛、俺たちの仲間ってとこだな。
 少し紹介しておくと、須田さんはうちの大学じゃないのだけど、大学の特待生なんだ。
 で、高山はうちの経営学部。」
「えっと、こちらが梶田梨乃さんだよ。」

 えっ、大学の特待生と経営学部生?
 どういうことかしら?

「梶田さん、僕らは梶田さんちの事情を詳しく知ってる訳じゃない。
 だけど、君の役に立てないかと思ってね。」
「は、はい、有難うございます。」
「須田さんの家は経済的にずいぶん厳しい状態なんだ、今もね。
 でも、彼女は自分の力で大学に通ってる。
 大学の特待生になるためにがんばったし、アルバイトもしてる。
 あっ、特待生って知ってた?」
「はい、何となくは…、でも自分とは無関係かと思ってました。」
「君が本当に大学に進学したいと考えてるのに、お父さんの会社がどうにもならなくなったとしたら、考えに入れるべきことだと思うよ。」
「それで…、あっ、須田さん、ごめんなさいお忙しいのに。」
「ふふ、梶田さんがあやまる必要はないのよ。」
「でも…。」
「須田さんは昼食だけでなく夕食もここで済ませていくしね。」
「はは、それじゃ、私、食い気ばっかみたいじゃん。」
「まあ、須田さんから色々話しを聞けば、学習にもっと前向きになれるかもしれないよ。」
「はい。」
「高山は、とりあえず呼んでおいた。」
「えっ、とりあえず、ですか?」
「君はお父さんの会社の事情、どれくらい分かってる?」
「えっと、特殊な技術を持ってる工場なので、それほど大きくなくても今までは結構安定していたみたいです。
 でも、ここのところ資金繰りが悪化したとかで、詳しくは分かりませんが。」
「君がお父さんの跡を継ぐということは?」
「特にそういう話しは出てません、弟が二人いますので…。
「でも、会社のことは直接君の人生に関わって来ることなのでしょ?」
「はい。」
「大学へ進学するとしたら、何を専攻したいと思ってる?」
「まだ…、高校でそれを見つけられたらと思っていました。」
「例えば、君自身がお父さんの経営する会社のことを考えるということはどう?」
「えっ、そんなこと、考えたこともなかったです。」
「そりゃ、高校一年生だもんな。
 でもさ、高校生だって、経営のこととかを学んだりしても良いんじゃない?」
「そっ、それは…。」
「これは俺たちからの提案、まだ君の家の事情もよく知らないから、少々無責任な提案かもしれないけどね。
 大学で経営学とか学んでいても、実際の経営に関われる機会なんて決して多くない。
 でも、君のように経営者の娘なら、本人に意欲が有り、親の理解が得られれば、本当に生きた経験が出来ると思うんだ。
 本での知識と実際の現場の経験とは全く違うからね。」
「はい、あ、そうですよね…。
 父は…、学校で成績優秀な子を雇っても、現場の経験はないから研修が大変だと言ってました。」
「もし、君が経営学とか学びたくなったら、高山は喜んで力を貸すし、えっと、ちょっと厚かましいお願いなんだけど…、なあ高山。」
「うん、教えることで、自分の理解も深まるから力を貸すよ。
 で、これは君のお父さんとの交渉になるのだけど、実際の経営状況とか研究対象として、お父さんの会社を見させて貰えないだろうかと思ってね。」
「えっ。」
「矢野から君の話しを聞いてね、君の手助けだけでなく、一つの会社の建て直しなんてことに関われたら自分にとって、すごくプラスになると思ったんだ、無理は言えないけどね。」
「みなさん…、私のこと…、私のため…。」
「はは、一度に色々話しちゃうから、梶田さんが戸惑っているじゃないか。」
「省吾さん…。」
「梶田さんは、まず須田さんから特待生のこととか聞いてみたらどうかな。
 高山さんの話しは明日でも、テスト終了後でも良いからね。」
「は、はい、省吾さん、有難うございます。」
「じゃあ須田さん、お願い。」
「はい、省吾さん。
 さ、梶田さん行きましょ、美咲ちゃん部屋は?」
「こっちよ。」

 省吾さんが…。
 なんか自分ではついていけない話しが…、でも自分のことなんだ、自分の為のことなんだ。
 みなさん、私のために色々考えて下さっている。
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