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それから-06 [シトワイヤン-35]

姫さまを中心とした大銀河帝国が拡大するにつれ、大きく変わった事の一つが宗教。
地球の長い歴史の中で、舞姫さまの様な存在は皆無だ。
たとえ釈迦やキリストの時代に情報網が発達していたとしても、そう、キリストは磔刑されたのだから、姫さまとは根本的に違う。
大銀河帝国は他者を傷つけない限り宗教を否定せず尊重して来た。
国民達は姫さまに忠誠を誓い慕いつつ、それまでの信仰と向かい合う。
姫さまの存在については宗教家によって様々な解釈が試みられたが、彼らが信じて来た神の定義に当てはまる訳もなく、姫さまに忠誠を誓う者にとって、それは無意味な作業でしかなかった。
結局の所、伝統的文化として尊重するが、それに縛られないという形が浸透。
それでも文化遺産として偶像は軽んじられる事無く大切にされている。
姫さまは舞の舞台として宗教関係の世界遺産を選ばれる事も。
そんな時は姫さま自らその歴史的背景を語られ、今の社会は多くの先人達の血と汗と涙によって築かれたもので有り、祖先に思いをはせ、感謝の気持ちを持って、この地を使わせて頂きましたと。
かつて宗教間では様々な対立が有ったが、我々はそれを過去を怨念として引きずるのではなく、今、舞姫さまと共に在ることを感謝し…、そう、宗教団体とは名乗っていないが、大銀河帝国は事実上世界最大の宗教組織とも言えるのだ。

「神の如き存在で有る舞姫さまは、神という抽象的概念に対して大きな影響を与えていますね。」
「だな、何故か世界各地に神と呼ばれる存在が宗教上の存在として伝承されている。
地域によって大きく異なる様々な神が世界中で崇められて来たのだから、古代には姫さまの様な存在がいたのかもな。」
「人間を神格化したのか、人間とは全く別の存在だったのか、大昔に作られた神話の世界はほとんど創作なのか、ほんの少しの事実を誇張したのか全く分からないです。
でも、姫さまは人の子として生まれ育ち、その過程を世界中の人が知っています。
それが将来的にも、神話のような怪しげな伝承ではなく、正しく伝えられたらと思うのです。」
「清香は、今の体制では不十分だと思うのか?」
「たまに、誇張された表現を目にしません?」
「う~ん、確かにな、姫さまは特殊な存在だからやむを得ないとも思うのだが。」
「神の如き存在ですが…、最近、裕といる時間が長くなっています。」
「姫さまの発言を気にしてるのか?」
「今は三歳児でもいずれは大人に、姫さまは智里にはまだまだ届かないものの、身長が今も少しずつ伸びていらして、常人とは身体成長の速度が大きく違うみたい、という事で裕との年齢差をあまり気にしておられないのかも知れません。」
「結婚相手としてか?」
「ええ、裕が天才の部類に属する事は証明されつつ有ります。
まだ先の事で何とも言えませんが、もしそうなった時に、姫さまは人間なんだと思って貰えていた方がスムーズに行くのではないかと。」
「そうだな、相手が裕で無くとも姫さま自身の幸せを私達は後押ししないと。
しかしだな、神の如き存在が息子の嫁になったら…、清香、どうする?」
「え~と…、嫁と姑の諍いのない様に…。」
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