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巡礼-01 [シトワイヤン-27]

帰国後、予想通り苗川には人の波が押し寄せている。
それに備えて指示を出しておいた通り、姫さまの住まいには部外者が簡単に近づけないよう、村人達が桃源郷だとするエリア全体のセキュリティ強化工事は完了済だ。
その周辺エリアには売店やトイレなどを増やしたが更に仮設トイレを設置。
混乱が起きて無いのは、姫さまの祝福を感じられるエリアが広くなってることの他、電車やバスの状況、渋滞情報などをテレビ局が伝えているのが大きい。
巡礼の規模が大きい為、姫さまは村外へ出かける事はほとんどない。

「和馬さん、飲食店関係の人達は休めているのでしょうか。」

姫さまの家に併設した私達のオフィス。
テレビで苗川市内の様子を見ていた、姫さまから。

「この一か月、人の波が途絶えませんので稼げる時に稼ぐという人が多いでしょうね。
でも、姫さまを感じながらですので疲れ知らずだとか。」
「旅行の計画をそろそろ確定して発表すれば、皆さんの休日スケジュールが決まるのでは有りませんか。」
「そうですね、旅行ルートに関係する自治体との調整は進んでいますので、巡礼の人達の為にも早めに発表します、今後の旅行計画も早めに組みたいですね。」
「月の半分ぐらいを旅行にしましょうか。」
「月の半分働いて半分を休む店が出て来そうですね、それぐらいでよろしければパターン化も可能です。
ただ、希望されていた過疎地への訪問は、多くの人を受け入れる態勢が整わず無理が有りそうです。」
「そっか、トイレだけでも大変そうですものね、残念ですが…、それでも地方を旅すれば、それなりの経済効果は見込めますよね。」
「はい、大都市圏を極力避けるコースにしています、通るにしても短時間で通過するだけ、都市機能を麻痺させかねないことを考慮しました。
経済効果は一時的なものになるでしょうが、その地へのリピーターを増やす努力をする様、訪問予定地の担当者には伝えて有ります。」
「祠を建てて賽銭箱を置くのです?」
「勿論です、現在開発中、最新の祠では、姫さまの舞姿を3Dホログラム映像で再現させます。
よりリアルにする為、協力をお願いしますね。」
「う~ん、DVDみたいな効果があればお賽銭も溜まるのだろうけど、どうかしら。」
「試してみる価値は有ると思いませんか?」
「そうね、私も見てみたいし。」
「パリなど、訪問したところからは記念碑的なものを建てたいという話も幾つか来ていまして、それならば賽銭箱文化を世界に広げようかと。
収益は全て社会福祉事業にということで如何です、ヨーロッパに新しい文化という事で。」
「神社的な存在になるのでしょうか?」
「それを目指して良いと思うのです、神社は多くの人にとって賽銭を入れて神様にお願いするだけの存在、何の束縛もされず、説教をされることもない、でもそれなりに大切にされてるではないですか。
姫さまが、さりげなく八百万の神の一人になったとしても何の問題も起きないと思うのです。」
「う~ん、天照大御神さまに怒られないかしら。」
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