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巡礼-02 [シトワイヤン-27]

苗川を訪れる人達が姫さまの別荘を目指さないのは、そこまで近づかなくとも祝福を感じられるという事と、かなり広いエリアが立ち入り制限区域になっていて別荘は目にすることすら不可能だからだ。
彼らは苗川へ来て祝福を感じた後、思い思いに自然探索や大改造の進んだ苗川市内を見て回るなどをして楽しんでいる。
苗川自体が聖域となり、始めは多くの来訪者に戸惑いの有った苗川市民だが、直ぐに市民同士で話し合い問題が有れば解決。
皆、舞姫さまのことが大好きで市民意識の高い人が多い。
また、臨時駐車場を分散させ、そこからシャトルバスを運行することで市内の交通量を抑制することに成功したことも有り、市民生活への影響は最小限に。
ローマからの報告を受け、直ぐに動き準備させた本間市長の力を改めて感じさせる。
それでも問題は幾つか出ていて、姫さまの旅行中に改善して行く予定。
その旅行の確認作業を智里と済ませ…。

「和馬さん、ヨーロッパでの経験が活かせているのかスタッフの手際が良くなりましたね。」
「まあ、日本語が通じるし舞姫さまのことはすでに広まっているからな、JRも協力的だそうだよ。」
「でしょうね、通常一時間に一本のローカル線で臨時列車を何本も組むことになり、バスでも儲けてますので。
こちらとしても今回利用する貸し切り列車の具合が良かったら、今後も使って行きたいですね。
車での移動より楽だと思うのです。」
「そうだな、いっそ専用列車でも作らせようか、姫さまにはより快適な環境を整えて行きたい。
使わない期間は観光列車として運用して貰えば良いだろう、スケジュールを早めに確定せざるを得ない状況だから可能じゃないか。」
「専用機の次は専用列車ですか、それで社会経済に貢献出来るのであれば良いのですが、でも個人の専用列車って有りなのですか?」
「何とかなるだろう、まずはJRに問い合わせてみるかな。」
「和馬さんはお気楽なのですね。
私は苗川を訪問してくれた人達に苗川大改造の事が上手く伝わっているのか気になっているのですが。」
「う~ん、そうだな…、人数が人数なだけに比率で考えると大きくはないのかも知れないが、それなりに学んで貰えてるとは思うよ。
今までもテレビで紹介して来たし、舞姫さま効果は大きいからな。
地球市民党への入党者も増えているだろ、入党者には必ず『市民』の意味を考えて貰ってる。
市民政党若葉、地球市民党、と考えて来たことの成果が上がりつつ有るのが、自分達の力によるものでなく、姫さまのお力によると言うのは残念な気もするが、大きなことには大きな力が必要なのだと思う、歴史的な出来事が今、進行中な訳だろ。」
「市民政党若葉を立ち上げた当初から地球市民党のような組織をイメージしていたのですか?」
「そこまではなかったが政治改革をしたいという思いは強かった。
偶然が重なって、政党が立ち上がり、その政党が政権を握って随分良くなってると思う。
新しい政党の弱みとして外交問題が有ったが、市民政党の有り方が海外でも認知され、結果、地球市民党に繋がり拡大しつつある。
でも、これからだよ、舞姫さまの力を借りてでも世界中の人の意識改革をしないと、地球の明日は安心出来る状態ではないだろ。」
「ですよね、問題は価値基準の違う人達がどう手を取り合うのか。
同じ様に万里に向かって祈ってはいても、まだ隣の異教徒と向き合えてないのが現状。
地球市民党の理念が多くの人に受け入れられれば良いのですが。」
「それには姫さまにおすがりするしかないのだよな。
まずは日本の国民に向かって、地球に住む地球市民という発想を広げて行く所から。
まあ、釈迦やキリストの時代と違って情報は伝え易い。
宗教とは一線を画すとは言っても舞姫さま信仰は始まっている。
私達は誤った情報が広がらない様に気を付けつつ、ひたすら姫さまのサポートをして行くだけだ。」
「あっ、万里は和馬さんの話し方が最近堅くなったって不満そうでしたよ。」
「そうだよな、前みたいに自然に話さねばと思うのだが、平伏したい気持ちを抑えるのがやっとなんだ。」
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