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市民-04 [シトワイヤン-12]

本間市長は、苗川の都市計画が前倒しになりそうだと話していたが、その理由が分かった気がする。

「皆さんの動きが早いのには何か理由が有るのですか?」
「代表、町の中心部でも道幅が狭いでしょ、そこから改善して行かなくては魅力有る街には出来ません、それには、都市計画を進めて行くしかないのです。
年数の掛かる事業だからと言ってのんびりしてはいられないのです。」
「工事が始まれば、工事関係者もそれなりに流入し、それだけでも経済効果が有ると理解しています。」
「そう言えば全国チェーンの店が幾つか見に来てたらしい、大きな投資が更なる投資を呼び込むのだろうな。」
「代表、人手不足の心配は有りませんか?」
「う~ん、清香が買収する建設会社はどう?」
「あっ、あそこの社長、決断したの、清香さん。」
「はい、後継者も無く経営状態が悪化していましたので喜んで頂けました。
別荘村中心に動いてる会社と建設会社で社員募集を始めていますが、苗川大改造に参加したいという党員からの応募が多いそうです。
順次採用し、スキルに応じて研修、まずは社員教育を兼ねて社員寮の改修を始めると聞いています。
妻帯者の方はとりあえず確保して有る空き家に住んで貰います。」
「暫くは、空き家が出来ても取り壊さず、移住者の仮住まいにするのですね。」
「はい、住居の建設が進んでから、一気に取り壊した方が効率的、その後も建設工事が続く訳ですから、多めに雇っても大丈夫です。」
「計画が思惑通りに行けば周辺へも経済効果が広がって、建設需要は当分なくならない筈だからな。」
「給料の良い仕事が有れば、東京から戻りたいという従弟がいるのですがどうです?」
「給与水準は東京に合わせています、凄く良いという訳では有りませんが、暮らし易さを考えたら魅力的ではないでしょうか。」
「資金的には大丈夫なのですか?」
「別荘村は利益率を高く見積もっていまして、担当者曰く、あの世まで持って行けないお金を沢山使って頂くのだそうです。」
「あっ、苗川を盛り上げる為に別荘購入宣言をしてくれた人の資産は想像がつかないと週刊誌に書いて有りました。」
「あちこちで眠ってる金を動かす事業なんだよな。
親父が老後の備えと言って持ってた資産なんて、どう考えても生きてる内に使い切れない額だった。
俺も余裕が有って遺産を当てにする気もなかったから、この先老化が進んだ時の事を考え介護のし易い家に引っ越してくれと説得したんだ。」
「大改造が始まらなかったら、二十年後に遺産相続とか?」
「長生きしそうだから、もっと先かも、その間じっとしてたかも知れないお金を動かせただけでも、事業に貢献しているよ。」
「清香お嬢さま、お父上がこの周辺の土地を買うというのは本当ですか?」
「本当かどうかは分かりませんが、荒れた山も買って下さいとおねだりして有ります。」
「おねだりか…。」
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