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夏休み-155 [花鈴-16]

 藤井さんと長話をしていたのはクワガタ捕りをパスしたから。
 朝早くから山道を登るだけの根性は私にない。
 そもそもクワガタは皆が捕まえて来たのを見るだけで充分だ。
 居残り組で朝食の準備を終えた所へ腹をすかせた連中が帰って来た。

「大賢者、成果はどうだった?」
「捕まえたノコギリクワガタの勇姿を見てくれよ。
 如何にも強そうで恰好良いだろ。」
「おおっ、男の子達が欲しがる気持ちが分かるわ。
 沢山いたの?」
「沢山ではないけど僕はこの二匹を選んだ、他の子達も無駄に死なせるだけだからと控えめでね、環境が整っていれば少しぐらい多めに持ち帰っても大丈夫なのだけど、売る為に沢山捕獲する人もいるから微妙だとか。
 僕らが捕りに行った所は許可を受けた人以外入山禁止だから荒らされて無いのだけどね。」
「売れるんだ。」
「見ての通りカッコイイからね。
 でも、このノコギリクワガタは寿命が短くて、この番で繁殖を試みるつもりなんだけど上手く行くかどうかは神のみぞ知る所。」
「そっか、繁殖に成功したのを売るのは有り?」
「それは問題ないと思う、でも、買って来たクワガタなんて味気ないと思うぞ。」
「私達の店では田舎ならではの商品を多く扱いたいのよ。
 ちっちゃな子だと自分では捕りに行けないでしょ。」
「付き添ってくれた人が虫捕りを通して生き物の命に付いて考えてくれたら嬉しいって話してた。
 ただ売るだけと言うのはどうかな。」
「そうね、その辺りは売り方を工夫して自然についての教育活動に繋がる様な…、来年の夏にはクワガタをマジで売ってみたいかも。」
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