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舘内亜美-01 [F組三国志-04]

 黒川くんがチェロやってたなんてびっくりした。
 びっくりしすぎて、思わず、私にやらせて、なんて言ってしまったけど、あ~ん、みんなにバレちゃったかしら。
 でも、黒川くんは優しいからなぁ~、気配りしてくれるし。
 ふふ、球技大会のことや演奏のことで話すこと多くなりそう。
 ピアノやってて良かった。
 でもチェロとじゃ、簡単に演奏出来ないか…。
 みんなの前で演奏する前に一回ぐらいは二人で合わせておけないかなぁ~。

「ねえ、亜美。」
「うん、な、何?」
「外、誰かいない?」
「そうね。」

 あっ、戸が開く。

「みなさん、おじゃましても良いですか~。」
「おじゃましま~す。」

 あっ、確か早川さん、教育実習で来ていた小山先生も。
 他の人たちは…。

「あっ、早川さんも遊びに来てくれたのね。」
「はは、表向きは調査とか研究だけど、ちゃんと学校側の許可も得て有るからね、はい、テストの打ち上げへ差し入れよ。」
「おお~!」
「テスト前の調査では、みんなも余裕無かっただろうから色々聞けなかったけど…、もう今日のホームルームの時間は終わって打ち上げが始まるのでしょ?」
「確かに、もう帰っても良い時間だな。」
「え~、私が来たのに帰るの?」
「い、いえ、か、帰りません。」
「ははは。」

「じゃあ、みんなに紹介しなきゃいけないな。
 遊びに来てくれたのは、チーム赤澤のメンバーでね、まずはさっき話題になったプロジェクトFのチーフ矢野さん。」
「矢野です、もう一度高校一年生を経験するつもりで、みなさんのことを教えて頂けたらと思っています、よろしくお願いします。」
「早川さんからは並んでる順に自己紹介で良いかな?」
「はい、リーダー。
 プロジェクトF、サブチーフの早川です。
 もう顔見知りの人も少なくないですよね。
 我らがリーダー、赤澤省吾の足跡を記す、なんてことの担当もしています。」
「えっと…、小山です、ってみんな知ってるよな。」
「はは、小山先生もチーム赤澤に参加してたのですか?」
「ああ、入れて貰ったって感じかな、赤澤くんの取り組みにはすごく興味が有るからね。
 教育実習との兼ね合いで問題が有るかと思ったのだけど、きちんと学校側の許可を貰えたからね。」
「大学生にとって、チーム赤澤ってどうなのです?
 リーダーが高校生で…。」
「はは、リーダーから学んだことは多いから、年齢は関係ないかもな。」
「よね、私も省吾さんの視点にドキってさせられることが多いの。」
「俺は省吾さまから学べって言われているよ、こいつにね。」
「はは、高山です。
 経営学を専攻していて…、リーダー、プロジェクトのことは?」
「もう発表済みだよ。」
「ならば…、プロジェクト梶田のチーフなので、よろしく。
 とかくリーダーって言うと年長者のイメージがあるけど、若くても優秀ならちょっと面白いと思ってね、企業の経営者だって若い人がなることも有るからね。」
「私は高島みどり、教育学を専攻していてリーダーのお父さまのお世話にもなっています。
プロジェクトFのメンバーなので、よろしくね。」
「俺は…。」

 十人も来てくれたのね、高校側の了解も得てるってことは、ほんとに真面目な取り組みなんだ。

「じゃあここからは、差し入れを頂きながらとしましょうか。」
「あっ、ちょっと待って。」
「矢野さん?」
「美咲ちゃん、ビッグニュースが有るんだ。」
「えっ、なに?」
「さっき俺たちは職員室へ挨拶に行ったのだけどね、先生方がF組のことで盛り上がっていてさ。」
「昨日までに終わったテストでF組はぶっちぎりなんだって。
 現代社会や英語の先生は早々と採点を済ませたそうなの。
 現社では他のクラスの平均が六十~七十点に対してF組は九十点を越してるとか。」
 英語は他のクラス平均五十~六十点に対してF組はあと少しで九十点。」
「やった~!」
「他の先生方も気になってF組から採点してるそうだけど、百点を含め高得点続出、もちろん不正の形跡は見受けられないって。」
 不正行為があると不自然な回答になって結構分かるそうなの。」
「当たり前だよ~。」
「うわ~、ということはテスト団体戦の方は、またしても僅差ってことか…。」
「ふふ、私は団体戦のことより他のクラスに勝てたことが嬉しいわ、ね、美咲さま。」
「うん。」
「さ~、ジュースも用意したから、紙コップ回して。」
「みんな輪を広げて、チーム赤澤の人たちにも入って貰って…、でも椅子がないわね…。」
「はは立食形式にしようぜ。」
「座ってられない気分。」
「よし、椅子と机の配置を変えるか。」
「おう。」

「みんなジュース持って。」
「ここは哲平に任せるよ。」
「おっけ~、では、F組の勝利を祝して、かんぱ~い。」
「かんぱ~い。」

 はは、みんなも嬉しそうだ。
 がんばったもんな。
 えっと…、うふ、黒川くんめっけ。
 小山先生たちと話してるのか。

「あっ、黒川くん、実習の時はありがとうね。」
「へへ、大したことしてませんよ、小山先生。」
「ねえ小山さん、F組の鶴翼の陣ってどうだったの?」
「早川さん…、あれはね、前に立った時のプレッシャーが半端ないのですよ…。
 黒川くんたちの、授業に真剣に取り組もうって目で囲まれるのだよ。
 他のクラスを無難にこなしてきた自信があっさり崩れ去りましたね。」
「先生に対する攻撃的布陣って、省吾さんが言ってたけど。」
「うん、あのプレッシャーに応えるだけの力量が自分にあったら、すごく良い授業が出来る場だったと思う。
 生徒の自発性に基づくものだからね。
 ただ、残念ながら、自分にはまだそれだけの力量がなかった。
 黒川くんたちに助けられてなんとか終わらせることが出来たけど…。
 一回目は特にひどかったんだ、指導の大久保先生からは何も言われなくて、ほっとしたって程度さ。」
「はは、そりゃあ大久保先生もF組に関しては…、早川さん、俺たちの数学教師は実質、省吾なのですよ。
 省吾が動いてテスト範囲まで小山先生に一気に済ませて貰ったから、後は自習中心になって。
 大久保先生の授業、最近受けてないな。」
「へ~、自習ってどんな感じだったの?」
「わいわいがやがや。」
「ふふ、そんなに真面目でもなかったんだ。」
「とんでもない、わいわいがやがやと、みんなで数学に取り組んでいたって感じ。
 黙々と問題に取り組み、わかんないことがあると、教師役の人に聞いたり、この問題はテストに出そうだって思った人はみんなに解いてみてって提案したり。
 難しい問題は省吾さまの説明をみんなで聞いたり。
 とにかく省吾さまの説明は先生より解り易くて、作ってくれたプリントもですがね。」
「じゃあそのプリント、見せて貰おうかしら。」
「そう言えば、早川さん達、今日は調査じゃないのですか?」
「ふふ、してるわよ、みんなでね、ほら、あちこちで会話がはずんでるでしょ。」
「ええ。」
「いかにも調査します、って感じじゃ、よそ行きの答えしか返ってこないって、省吾さんに言われてね。」
「う~ん…、そんな話しを聞くと、ほんとに省吾がリーダーなんだって思えるな。」
「ふふ、チーム赤澤って省吾さんのお父さまのチームだって思っている人が結構いるみたいだけどね。」

 省吾さまって美咲さまと話してる時なんか、普通の高校生なのにね~。
 ラブラブで。
 あ~、私も黒川くんと…。

「淳一、球技大会の打ち合わせしよ、加藤さんも連れて来たし、ああ、舘内さんここにいたんだ。」
「おっけい、じゃあ小山先生も早川さんもゆっくりしていって下さいね。」
「うん、ありがとう。」

 そうね、今から始めないと時間がないかな、林くんは意外としっかりしているのね。
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