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山影静-01 [F組三国志-02]

「あらっ、静、スケッチブック、持って行くの?」
「うん、遠足だから。」
「今日は良いけど、勉強、しっかりしてね。」
「はい、いってきま~す。」

 母の話しは、私を憂鬱にしてくれることが多い。
 よく出てくるのは、山影家の長女だから、という言葉。
 兄か弟がいたら、もっと自由で、ずいぶん違ったのだと思う。
 妹は学校の成績もいまいちで…。
 でも、今日は遠足。
 スケッチとか考えてたら無駄に荷物が増えてしまった。

「山影さん、荷物多いね、持とうか。」
「あ、ありがとう。」
「ぼ、ぼくも持ってあげるよ。」

 えっと…、始めに声を掛けて来たのは、確か…、星なんとか、もう一人はいたぶられるのが好きな人…、興味が無くて名前を覚える気にもならない。

「自分で持てますので…。」
「学校まで大変だったんじゃない? 気にせず楽しなよ。」
「あらっ、お二人って意外と紳士なのね、じゃあ、はい。」
「はい、って? 斉藤さん?」
「私のは持ってくれないの?」
「斉藤さんに、その荷物は小さ過ぎないか?」
「そうかな、乙女の私にとっては充分重いのだけど。」
「う~ん、斉藤さんに言われても説得力がいまいちでさ。」
「どうして、山影さんと私じゃ…。」
「えっと…。」

「ごめん、待った?」
 あっ、赤澤さんだ。

「打ち合わせは済んだのね。」
「ああ、こっからは五人で行動するよ。」
「でもさ、同じとこへ行くのだから、みんな一緒でも良かったでしょ? 地下鉄だし。」
「斉藤さん、それも悪くは無いのだけどね、班員同士が語り合える時間があっても良いだろ。
 向こうでの企画を考えた上でね。」
「ふ~ん、色々考えてんのか…、でもね、この二人、私の荷物、持ってくんないのよ。」
「えっ? その荷物? 俺、持とうか?」
「いいの? ラッキー。」

 赤澤さんは大人だ。
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