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07 揉め事 [KING-03]

 作戦の初日、相手国の三名が死亡した。
 予定外の事では有ったが作戦の失敗とは言えない。
 元々老化の進んでいた人が、記憶の蘇りに耐えきれなかったとの報告を受けたからだ。
 食事の差し入れ業務、サポート担当者の交代もスムーズに行なわれている。
 残った五十七名の過去は少しだけ聞き出せた、それが事実かどうかは分からないが。
 ただ彼等が元犯罪者で有ったとしても、暴力を振るわず過去の事を忘れてくれたら何の問題もないと考えている。

「向こうからの連絡はどうなの?」
「先程ロックから定時連絡が有ったが、特に問題は起きてない、居住コロニーの三名は落ち着いて来たが、三人とももうしばらく一人で居させて欲しいとの事、檻の四名は暴れて悪かったと反省しているそうだ。
 気になるのは、人種毎のグループを見て回ってる三之助から、人種グループ毎に老い方の程度差が有るが、一グループだけ特に若く感じられると報告が有ってね。」
「罰を受けて無いから問題がないとは考えてないのね、三之助は。」
「その様だな、私は見過ごしていたが、特別な存在は要注意だ。
 あっ、八重、お疲れさま、子ども達はどうだった?」
「乳児は保育担当者達が面倒を見ていて大丈夫。
 城の子に面倒見て貰ってる子達は麗子のおやつを満足そうに食べてたわ。
 香中心に、沢山遊んで疲れた子から寝かせる作戦が進行中よ。」
「事前に顔合わせをしておいて正解だったのかな。」
「多分ね、香たちは愛や望とも相談していて、自分の役割を把握しているみたい。
 もう、私達が教える事なんてないのかも知れないわ。」
「そうだな、尊や翔も色々教えている、城の子達の教育はもう彼等に任せて良いのかも。」
「ロックは早々と自分で教える必要を感じなくなり、城の子以外に集中しているものね。
 マリアさまとキング、そして三年生が城の子の先生ということかしら。」
「はは、私の出番は、もう、ほとんど無いよ。
 彼らは自分で考え相談し動いているが、その判断に間違いは感じられない。」
「それは頼もしいね、私はそろそろロックと交代しに行くが、持って行く物は?」
「セブン、麗子が用意してくれた夜食をお願い、一花が三之助と交代すると言ってたから一緒に行ってね、それと子ども達の様子は端末で尊を呼び出せばライブ映像が見られるの、子どもの事を心配している人がいたら見せて上げて。」
「分かった、キング、今回の交代は一花以外は予定通りだ。」
「三之助は予定を早めるのか?」
「ロックからの指示よ、今夜だけじゃないから三之助に無理させるなって、私が代わろうかと思ったけど、セブンと一緒なら自分が行くって、一花が。」
「そうだな、セブン達の後はスコットランドに引き継ぐが、何時何が起こるか分からない、皆、休める時に休んでくれな、八重、三郎は?」
「さすがに疲れたと話していたけど、もう少し作業を続けるそうよ。
 ロックや三之助と連絡を取り合いながら進めて来た五十七人の分析が今一つスッキリしないとかで、特に向こうのブラックコロニーが特定出来ていない事が気になるって。
 今までの国は簡単に特定出来たでしょ、死者が多く老化の進んでるコロニーだったから、でも今回はね。」
「そうだな、全部がブラックコロニーの可能性だって有る。」
「あっ、三郎から連絡だ。」
『ロック、セブン、コロニーDが怪しい、コロニー居住者全員の所在を確認してくれ。』
『分かった、特に気を付ける事は?』
『本人が直接人を傷つけることはないが、言葉巧みに他人同士を傷つけ合わせている節が有る。』
『やはりな、三郎、こっちでも一人に違和感を感じて、今、三之助が対話を始めた所だ。』
『ロック、どんな人物?』
『この国の中では若く見える白人女性だ。』
『なら間違いない、三之助が相手してるのなら問題ないだろう、セブン、他の連中のデータは確認してくれたか。』
「ああ、今確認した、これからどう動く?」
『あまり慌ただしく動いては向こうの連中に不安感を与える事になる、まずセブンはロックと合流して、コロニーDのメンバーを居住コロニーへ隔離してくれないか、このグループはサポート担当を巧妙に言いくるめてバラバラに行動しているんだ。
 全員若く見える白人というのが共通の特徴、探し易いだろう。』
「了解した、適当に理由を付けて居住コロニーへお帰り願うとするよ。」
『私はキングに報告してから、そちらに向かう、自分の手を汚さずに揉め事を起こして他人の老化を促進させた連中の意図はまだ分からないがな。』
「分かった。」
『では、また後で。』
「という事で、すぐに行くよ、夜食は一花に任せてくれるか。」
「ええ、気を付けてねセブン、必要なら私も向かうから連絡して。」
「ああ。」

 その後一花も出かけ、しばらくして三郎がダイニングルームへ。

「キング、向こうに入った時から違和感が有ったんだ、複数の人種が共存している中で、特定の人種だけ若いという事にね、でも罰を受けてないのだからまじめで平和的な人達だろうと思っていた。
 ところがこちらに戻り向こうの音声情報を探っていたら、その一人が巧妙に、実に巧妙に他人を争わせる様、仕向けていたんだ。」
「他の人達を争わせ自分は高みの見物、ここの罰則に引っ掛からなかったという事なのだな。」
「何の為にやってたと思う?」
「他の人種グループから力を削ぐ為か…、そんな事を記憶にプロテクトの掛かった脳で八人協力してやっていたとは…、排他性は本能的な物なのだろうか、あ、連絡だ。」
『キング、三郎、ブラックコロニーの八名は居住コロニーに集めた。』
「早かったな、こちらは八重と麗子に任せて私達もそちらに向かう。」
『ここのリーダーも呼ぶか?』
「いや、まず我々で状況を確認してからにしよう。」

 八重と麗子には端末で音声を送ると伝え三郎とゲートをくぐった。
 ゲートの近くでロック達と落ち合いコロニーDへ連絡を入れる。

「皆さんとお話しするのは初めてですね、和の国リーダー、通称キングです、少しは落ち着きましたか?」
『ましにはなったが、まだ落ち着かない、我々は居住コロニーへ戻る事を許されたが程度が軽いという事か?』
「誰も暴れなかったからな。」
『しばらくコロニーから出なくて良いと言われたが大丈夫なのか?』
「ああ、家畜の世話などは、こちらでやるから安心してくれ、そのコロニーに食料は充分有るのか?」
『今日に備えて二週間分の蓄えが有る、ささやかな畑も有る。』
「では、少し踏み込んだ質問をしたいが構わないか。」
『短い時間なら大丈夫だ。』
「君達以外の人種をどう思っている? もしくは君達の事をどう思っているかでも良い。」
『えっ…、べ、別に人種の事は考えていない、この国には色々な人種がいて協力し合って来た、皆、仲間だ。』
「そうか、ならば安心だ、ではゆっくり休んでくれ、暴力的になった人もいたからしばらく居住コロニー住まいになる。
 子ども達の様子はそちらでもライブ映像を見られる様にするので安心して欲しい。」
『分かった。』
「ではお休み。」

 スコットランドチームと管理業務を交代するまで他の人達の様子を見て回り情報を仕入れた。
 コロニーDに関しては暗い表情のリーダーから許可を得て、ゲートを私の許可なく出られない設定にしたが、リーダーの彼にその理由を聞くだけの余裕がなかったのは幸いだった。
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おにい

始めにアップした時、『第四コロニー』と表記したコロニーは都合により『コロニーD』へと変更させて頂きました。
悪しからず。
by おにい (2020-01-06 16:47) 

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