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或る日の-05 [シトワイヤン-15]

或る日の夕食後。

「苗川について面白い報告が有りました。」
「誰からの?」
「苗川の経済を研究している学生です。
主にサービス業の時給が上がった事による効果を調べているそうで。」
「単純に考えれば質の向上に繋がっていると予測出来るね。」
「ええ、聞き取り調査をした結果、確実に店員たちの質が向上しているそうです。」
「それは、時給に見合った仕事を求められてということかしら。」
「求められてと言うより自発的なもの、市民政党若葉の聖地で働いている、給料面など待遇が良い、そこから向上心が高まっているとのこと、殆どが市民政党の党員ですので。」
「最低賃金レベルで働いている若者とは意識が大きく違うのだろうな、彼らは自分達を社会の底辺と捉えていた、この所人手不足気味らしいから、すでに抜け出しているかも知れないが。」
「向上心を失っていると簡単には行かないかもよ。」
「苗川の店員達は身だしなみにもお金を使える様になり、美容関連の売り上げアップに貢献。
そして綺麗な子が多いと評判になって男性客が増えてるとか。」
「そんなに単純なのかな?」
「学生からの報告ですので客観的ではないかも知れませんが、乾社長は否定してませんでした。」
「苗川に綺麗な子が多いと言われてもな、俺は美女二人と一緒だからかその印象はなかった。」
「ねえ和馬、美人は三日で飽きるというのは、実際どうなの?」
「う~ん、それは外見だけの美人に関する説じゃないのか、二人とも人間的にも素敵だからね。」
「あ、有難う…。」
「ふふ、苗川があのエリアの中心になっているのは間違いないです。
まだまだ工事中ばかりですが、苗川を素敵に変えるという意識は若年層にも浸透していて、街の魅力を上げる原動力になっていると、それを後押しているのが給与面の周辺市町村との格差みたいです。」
「その格差は無くして行かないとまずいよな。」
「ある意味、歪が生じているのよね。」
「苗川スタンダードを周辺に広げて行くことは計画に入っています。
今は、その格差を埋めて行くことがエリア全体の目標ですが、市民政党としては日本中の地方都市と大都市圏との格差を減らして行くことが大きな目標でも有ります。」
「そうだったな、今は他の地方都市が羨む様な形で苗川を発展させ、地方再生のシンボルに、苗川に習って改造を考え始めてる地方都市が出て来てるのだから。」
「和馬、そんな地方都市でも給与面の改善はなされるのでしょうか?」
「建設業は問題ないだろうが…、サービス業に関しては苗川の様に大きく動かさないと難しいのかも知れないね。」
「地域が活性化すれば店の利益も増えるわよね。」
「ですが、従業員の給料を上げるという、乾社長にとっては簡単な事が、個人経営の飲食店では難しいそうです、苗川ではかなりクリア出来ましたが。」
「私利私欲ということ?」
「いえいえ、乾社長は売り上げが落ちて来たら、店を閉店することに全く抵抗が無いと常日頃から話しています。
味に飽きられたら、違う味で勝負する、個人経営の飲食店では簡単には真似出来ません。
その余裕の差が給料にも関係してるのです。
他店なら利益目標を二千万にする所を一千万に抑え差額を従業員に還元する、それが明日の利益に繋がるのだそうです。」
「目先の小さな利益に拘らず先々を見据えているということかな。」
「はい、人材の育成が進んだら会社の更なる拡大を目指しています。」
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