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神沢祐樹-95 [高校生会議2-18]

「難しい問題ですね、確かに古典を全く知らなくても生活には困らない訳ですから、どれだけ綺麗ごとの理屈を並べられても受け入れられない人は少なくないでしょう。」
「祐樹くんにそう言われてしまうと…、でも昔の人も恋をしたり、美しい風景に感動していたと思うの、そんな事を日本人として感じて欲しいわ。」
「それなら…、まず暗記を強要する様な授業はどうでしょう。
生徒の中には暗記の苦手な人もいます、古典を味わう前に嫌いになりませんか?」
「そこなのよね…、学校教育が受験をゴールにしてる一面が有るでしょ。」
「そうですね、うちは大学合格をゴールにしない教育を目標に掲げていますから、まだましなのでしょうが…。」
「進学校の場合、受験に直接関係ない教科…、音楽の授業なんて当然低く見られていてね、音楽教師として残念な気持ちにさせられる事が有るのよ。
進学とか考えていない生徒にとっては古文だって似た様な事なのかもね。」
「高校の場合は、入試によって生徒が分けられていますが、小中学校の教育は全ての子に同じ教育を施そうとしています。
学力差が大き過ぎてバランスが悪く、とても残念な状態だと思いませんか?」
「そうね、教科書を一度読めば理解出来る子と、丁寧に何度説明しても理解出来ない子が同じ教室で授業を受けているものね。」
「教師は大変でしょうが…。
自分は小学生の頃から、同級生に算数を教えていました、その話の流れで親父が教師の役割について話してくれた事が有ります、小学生の頃なら、その教科を好きにさせる事が一番大切なんだと。
親父は点数、成績に関係なく、例えテストが零点でもその教科が好きになれたら楽しいだろって、まあ、好きな教科で零点を取るのは難しいと思いますが。
好きに成れたら次に繋がる可能性が広がります、でも、嫌いになったら可能性は極端に小さくなりますよね。
本当にきめの細かい教育をするなら個々で目標設定を変えるべきで、百点取れる子と十点しか取れない子だったらテスト問題その物が違っていても良いと思うのです。」
「そうね、大人の事情が色々有って難しいでしょうが…。」
「自分が算数や数学を教える時は、その子の力に応じて、例えば難しい問題は取り敢えず捨てよう、と話し、出来る問題を増やす様にしていたのですよ。」
「あっ、祐樹くん伝説の一つね、先生より分かり易いと評判だったのでしょ。」
「はは、中学では人数が増えて大変でしたが…。」
「そうか、祐樹くんは小中学生の頃から、自分の考えに沿って教育活動をしていたのね。」
「教育活動というのは少し大袈裟ですが、話を戻すと、古典の授業が楽しくないのに強制されているとしたらどうでしょう。
それで…、先生方から生徒へのメッセージというのは、どの様な内容なのですか?」
「そうね…、祐樹くんが、綺麗ごとの理屈、と話したそのままかも。
考えてみると、一部の子にとっては学習が嫌いになるような授業を受けさせられ、テストでは良い点数を取れと言われて来た、それなら生きて行くのに困らない教科に必要性を感じなくなって当たり前ね。
祐樹くんは、学習が好きになって、その子なりに、少しずつでも理解が深まって行けばって思っているのでしょ。
もう一度話し合ってみるわ、少し先になるけど夏休みにはチームの全員が揃う話も出てるし、教科を好きにさせる教育を他の教科の先生にも問いかけてみようと思う。」
「お願いします、そんな過程を番組に盛り込んで欲しいのですよ。
まず先生から生徒へどんなメッセージを伝えようとしたか、そこからどの様な議論がなされたか、簡単で構いませんのでまとめて頂けませんか。
番組制作のサポートをお願いしている社員には、早めに『しのぶれど』とコンタクトを取って貰いますので、どんな結論になろうと構いません、古典なんて学習する意味が分からない、と生徒に言われてしまった先生から始まるストーリー、それを通して視聴者の方にも考えて頂けたら良いと思うのです。」
「分かりました、祐樹くんは、楽しく古典に接するきっかけと考えて百人一首をモチーフにした歌を提案してくれたのよね、分かっていたつもりだったけど改めて良い曲を作りたいと思うな、私も祐樹くんの部下として頑張るわ。」
「いえ、先生は部下ではないですから。」
「良いのよ、でも、そういう内容の場合、祐樹くん達は出演しないの?」
「制作サイドの判断に委ねていますが、VTRを見て一言みたいな形が有るかも知れません。」
「そっか、教師として恥ずかしくない内容になる様、頑張るわね。」
「でも、無理はなさらないで下さいね、部活の指導も有って大変なのですから。」
「だ、だめよ…、そんな優しい言葉を気安く掛けられたら…、私の婚期に影響しちゃうじゃない。
私の周りの男どもには優しさが不足しているのよ。」
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