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121-演技 [岩崎雄太-13]

オフの日、手の空いてるスタッフが集まって譲治の話を聞いた。

「趣旨は分かったわ、じゃあ私が譲治の恋人役になれば良いのね。」
「勝手に決めないでよ、身長的には私の方がバランスがとれてるわ。」
「あらっ、お子様たちは譲治の妹にしてあげるわ、年上の魅力ってのをミステリアスに表現してあげるわよ、わ・た・し・が、ねっ、譲治。」
「だめですよ、恋人は年下じゃなきゃ、でも私は妹キャラで行きたいかも、お兄さま大好き妹キャラ。」
「年下じゃなきゃというのは歪んでるし、みんなベタよね、私は譲治の命を狙う敵国のスパイという設定で攻めるわ。」
「お前はどういう妄想を膨らませてんだ、大体、正平を置き去りにしてないか?」
「それは問題ないわよ、正平はとにかく歌の担当、ステージはみんなで作って行かないと、この先きつくなるわ。」
「だな、正平に沢山の段取りを教え込むのは無理が有る、かと言って歌だけではな、ブランドの服をアピールする必要も有るし。」
「ねえ譲治、どうまとめて行くの、このメンバーを。」
「ひとまず全員が自分のやりたいポジションについて考えてみたら良いと思うよ、あっ、命を狙っても良いがほんとに攻撃して来るなよ。」
「秘密を探るのは有り?」
「知らなきゃ良かったって秘密を用意しようか?」
「うっ…。」
「正平が歌ってる曲で、葵姉さんと譲治の絡みに合いそうなのが有るわね、場面を想定してブランドチーフと相談しようか?」
「そうか、正平が歌ってる曲からイメージして行けば良いんだ。」
「健康的な同級生。」
「別れた…、あ~、哀しいヒロインにはなりたくないかも。」
「大丈夫、あなたには似合わないから、私がやったげる。」
「そう言うあなたはもう少し体型を気にしなさい…、哀しい程イメージから遠いわよ。」
「そうね、舞台を見たお客さん達のイメージが良い形で広がる様に、私達が素人だという事は理解して頂くとしても出来る範囲でレベルを上げて行きたいわ。」
「今までは商品サンプル着て立ってるだけみたいな感じだったけど、売り上げアップを考えたら一歩踏み込んだ演出を考えるべきなのね。」
「そういう事だ、バックのメンバーも前面に、例えば元気な妹キャラならそれに合わせた衣装を着てアピールとか、まあ全員というのは大変だろうから、特に注目して貰うメンバーを選ぶ事になるが、それ以外のメンバーも、自分がどういう立場なのか意識して衣装やメイクに気を付けて欲しいかな、例えば担当がグッズ販売だったとしても、正平を支える姉とか妹とか、お客さんと会話する事が有ったら弟をよろしくお願します、みたいな感じでさ。」
「譲治先輩に頼まれたら断れません。」
「ふむ、後輩キャラなら今よりもう少し可愛さを前面に出した衣装にしようか。」
「葵姉さんはもっと、色っぽくて妖艶な感じですか?」
「譲治とのバランスが悪くならない程度にね…、デザイナーチームと相談した方が良いわね、譲治。」
「そうですね、お願いします、みんなはスタッフ全員が素敵なファミリーを演じる事を考えてくれないかな、あまり現実離れしてしまうと無理が出るから、現実から遠くならない様に気をつけて。
仲が悪いとかはイメージダウンになるから、実際に仲の悪い人達はこれから構築していくバーチャル空間では仲良しとまでは行かなくても争わない設定にしてくれないか。」
「何か楽しそう、演劇って憧れてたけど自分とは遠い世界だった、私、ここでは違う自分になっても良いのよね。」
「良いけど、演じ続けていると、それが本物になる、嫌な女を演じるなよ。」
「はい、譲治お兄さま、妹として恥ずかしくない様にします。」
「上品さに磨きを掛けろよ、黙っていればそれなりなんだから。」
「は~い。」
「ふふ、家族ごっこなのね、譲治。」
「ええ、正平に興味を持ってくれた人達は、その背景も知りたくなるでしょう、そこで演じられている世界観もひっくるめてファンになって貰おうと思います。
その世界に入りたくなれば、うちのブランド品を買う事になります、上手く行けば儲かりますよ。」
「ふふ、お主も悪よのう。」
「姉さん、そこは違いますよ、えっと…、あなたって罪な人ね、とか…。」
「それも違う、ただ、譲治兄さんは、もっとクールな感じで話してくれると…、私達の裏ボスなんだから。」
「譲治、漠然とだけど設定を思いついた、俺の方で、文章化して共有出来る様にしてみるよ。」
「拓也は売れない貧乏作家という設定なのね…、貧乏くさい登場人物は要らなくない?」
「おいおい、俺を勝手に貧乏設定にするなよ。」
「譲治先輩、私も舞台の演出に参加させて貰えませんか。」
「ああ、兎に角役割分担はみんなで考えて行こう、これからは無料ライブばかりでは無くなるから、さらに気を入れないとね、台本も必要になるだろう。」
「台本を貧乏作家に任せるの?」
「まだ全部白紙だな…、しばらくは総合演出としてみんなの案を俺の方でまとめて行くよ、みんな頼むな。」
「もちろんよ、私達の目標に向けて頑張るわ。」
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