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102-経験 [岩崎雄太-11]

「お父さま、ちょっと見落としていました。」
「見落とし? 里美にしては珍しいな。」
「スーパー銭湯を中心に観光にも力を入れて行こうとなっていますが、訓練生は観光の経験が少な過ぎるみたいなんです。
お客様の気持ちになって接客しましょう、と聞かされても、観光客として接客された経験がなくては、客の気持ちは掴みにくいかもしれません。」
「そうか…、経験不足か…、親の愛情を知らないから、結婚して子育てが出来るか不安だという子もいた、我々がもっと踏み込んで考えてあげないとだめかもな。」
「漁師見習いの連中も、始めは漁師さんの家に泊めて頂くだけでも緊張したと言います。
それで、訓練中の子達は研修も兼ねて旅館での宿泊を経験させようかと思います、先方には事情を説明して、うちの子達がストレスを感じない様に配慮を求めてですが、程よく傾きかけたお手頃な旅館が有りますので。」
「その旅館の再生を兼ねてという訳なんだな。」
「はい、それとは別に家事手伝いの延長でのお泊りも、今まで経験して来なかった子達にも経験して貰える様な体制を作りたいと考えています。」
「そうだな、協力して下さる方は少なくないだろう、養護施設の子達にも、お爺ちゃんち、お婆ちゃんちを経験させてあげたいものだな。」
「はい、畑仕事や草むしりのお手伝いとセットで進めてみます、お泊りは工房の寮で随分慣れたと思いますから…、家族みたいなグループを作って泊めて頂く形を考えてみます。」
「それが可能になるぐらいになって来たという事なんだな、どうだろうスーパー銭湯のフルオープンも近い、そろそろ、ここの活動をマスコミに解禁しても良いのではないか。」
「う~ん、そうですね、ここは特殊事情が有りますが、積極的に公表して行くのは職業訓練校と都会からの移住者ですね。
何かのはずみで犯罪歴の事が知られてもこの村の住人に関しては大きな問題にはならないと思います、村長と相談して、皆さんの意見を伺ってみます。
マイナスの面よりドライブインを中心にプラスになる事が多いと思います、そうだダンサー志望の子に出番を作ってあげましょうか。」
「漁業とも深く係わって行こうとしてる事を強調したいところだな。」
「はい、マスコミ関係に強い人が大学の先生にいますから相談してみます、注目が集まれば売り上げも伸びると思いますし支援体制も強化出来そうです。」
「村人に対する配慮だけは忘れないでな。」
「はい。」
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