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F組三国志 12-5 [F組三国志 12 舘内亜美]

「なあ、省吾からF組の学年順位が今後下がっていくってこと母さんに話しておいてもらえないかな。」
「ああ、そうだな、誤解されてもいけないから。」
「下がっていくことが予定に入っているの?」
「はい、みんな今後もがんばるって言ってます。
ただ、F組で成功した取り組みを、F組だけで終わらせたくないとも思っているのです。
今回F組で作った予想問題は、先輩方の協力もいただいて過去の問題も参考にしています。
おかげで、かなり中身の濃い予想問題となったのですが、今回はF組外へは漏らさないようお願いしていたんです。
インパクトのある結果を出したかったからで、その目的は達成されたと思っています。
で、今後は他のクラスとも、競い合ったり協力し合ったりということも視野に入れています。
その中で学年のレベルアップということを目標にして、今後の敵は全国の進学校です。
F組、みんなの学年順位は下がっても、偏差値は上がる、全国模試を受ける人の結果に注目って取り組みです。」
「そうか、自分たちだけのことじゃなく、みんなのことを考えているのね。」
「はい、みんなも納得してくれています。
二年になったらクラスも変わりますからね、今から協力し合っていれば、その時、他のクラスの人たちとも早く仲良くなれると思うんです。」
「先のことも考えてるんだ…。
じゃあ淳一が、がんばってるかどうか、私ははどう判断すれば良いのかしら?」
「そうですね、クラスの数を考えてみて下さい。
淳一のクラス順位は五位、八クラス有りますから、単純計算なら学年四十位でもおかしくありません。
もちろん淳一は目標をもっと上においています。
得点は、これから変化が予想されます。
学年平均が上がると、より難しい問題を出す先生も出てくるでしょうから。」
「ということは、点数も順位も下がるってことなの? リーダー。」
「表面的にはね。
それと、テストのことばかり考えていたのでは、つまらない高校生活になってしまうから、無理はして欲しくないとも思っていて…、ま、そのあたりの取り組みも考えてはいます。
淳一みたいに、テストで結果を出しつつ、コンクールで優勝して、ちゃんと彼女もいる、なんてのは理想だけど。」
「そうよね、私も惚れそうだな。」
「早川さん…。」
「ふふ、亜美ちゃん、また淳一くんにしがみついて、大丈夫よ取ったりしないから。」
「あっ、私…、今日…、お母さまの前なのに…。」
「じゃあ私から一言お母さまに、普段の亜美、舘内亜美は真面目で明るい人なんです。
面倒見も良くてクラスのためにも色々積極的に動いていてくれる…、そう、いい加減な人じゃなくて素敵な人なんです。」
「ありがとう、美咲さま。
それにね真っ直ぐな人なんだよ母さん、嬉しい時は嬉しいって、はっきり言ってくれる。」
「う~ん、淳一も、なんか急に大人になったわね。」

「えっと私…。」
「どうしたの? 亜美さん。」
私、今日、ちょっと、淳一さんのチェロにびっくりしてしまって、あの…、ちょっと…、ごめんなさいです…。」
「亜美さんは、淳一のことどう思ってるの?」
「そ、そりゃもう、大好きです!」
「なら、なにも謝ることはないわよ。」
「は、はい…。」
「そうね、淳一が高校生の内は孫の顔は見たくないけど。」
「えっ? え~! やっだ~!」
「はは、うちの親と同じだな。」
「ふふ、うちの母さんは早く孫の顔が見たいって言ってるけどね。」
「あら、省吾さまたちのところは両親、ご両家公認なの?」
「はは、美咲は俺が紹介する前から両親に気に入られて…。」
「もう、あれは、麻里子の陰謀よ。」
「俺は何となく美咲の母さんに気に入っていただけたみたいで。」
「母さん息子ができたって喜んでるんです、省吾は家も近いから良く遊びに来てくれて…。
? 遊びに来るというより勉強かクラスの仕事ばかりだったかも。」
「はは、勉強にクラスの仕事、省吾リーダーは美咲ちゃんとのデートの口実作りにがんばったのよね。」
「もちろん、色々考えたさ。」
「ははは。」
「えっと、お母さま、私、また来ても良いですか?」
「ええ、ぜひいらして下さいな、亜美さん、ピアノも弾いてね。」
「はい。 有難うございます、こんな素晴らしいピアノ弾いたの私、初めてなんです。」
「ふふ、ちゃんと楽器のことも分かっていたんだ。
このピアノはね、私のお婆さまがお使いになってたものでね、古くても本当の職人が丹精込めて仕上げた逸品。
この家を建てる時もこのピアノをリビングの中心に据えるというところから設計を始めてもらったぐらいの、私の宝物なのよ。」
「そう言えばさ、俺の使ってるチェロって…。」
「そのチェロは、私のお爺さまが使ってた物で、ふふ、安物じゃないんですよ。
淳一は、バイオリンやってたのに、このチェロ見つけたら弾きたいって言い出したのよね。」
「駿が俺の使ってたバイオリン使いたいって言ってたこともあるけど、子ども心に惹かれるものがあった…。
でも、さすがに最初は苦労した。」
「そりゃ、小学生にとってチェロは大きすぎたろうな。」
「あっ、それじゃあ、淳一くんの、ひいお婆さまとひいお爺さまがこのピアノとそのチェロで一緒に演奏してたってこと?」
「ええ、美咲さん、私は小さい頃に聞いたのが最後だったから良く覚えてないけど、写真は残っているのよ。」
「うわ~、その楽器でひ孫が演奏なんて…、なんか浪漫を感じさせるな~、二人の演奏神がかり的だったし。」
「う~ん…、お二人の霊が楽器を通して淳一くんたちに…。」
「よして下さいよ、髙尾さん。」
「私、それでもいい。」
「亜美。」
「だって、すごくあったかくて優しかったんだもの、ピアノの音、自分が弾いてるなんて思えないぐらいに。」
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